2005 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザ予防への新しい手法:食品素材を用いたウイルス感染阻害剤の酵素合成
Project/Area Number |
17658041
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 憲二 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (70109049)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 高嶺 石川県立大学, 生物資源工学研究所, 講師 (70346104)
伊藤 正恵 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (10201328)
|
Keywords | インフルエンザウィル / 感染阻害剤 / シアロ糖鎖 / Mucor hiemalis / エンド型グリコシダー / キトサン / 糖転移生成物 |
Research Abstract |
インフルエンザウイルスはその表面膜のヘマグルチニン受容体を介して宿主の細胞膜糖鎖の末端に存在するシアル酸に特異的に結合する。このようなシアロ糖鎖がニワトリ卵黄中にある糖ペプチドに多量に存在することに着目して、カニ甲羅から得られるキトサンにシアロ糖鎖を酵素的に密に結合付加させた糖鎖ポリマー化合物をインフルエンザウイルス感染阻害剤として合成することを試みた。先ず、鶏卵の卵黄よりフェノール抽出とカラムクロマトグラフィーによって、シアロ糖鎖を有する糖ペプチドを調製した。一方、原料基材を合成するためにN-Acetylglucosamineとp-Hydroxybenzaldehydeを材料として、有機合成法により、シアロ糖鎖が結合するスペーサーとなるp-Formylphenyl-β-D-N-acetylglucosaminideを合成した。次に、N-Acetylglucosamineが付加した化合物に糖ペプチドよりシアロ糖鎖を特異的に結合付加する糸状菌Mucor hiemalisのエンド型グリコシダーゼをその培養液よりさまざまなカラムクロマトグラフィーを用いて部分精製した。得られた酵素標品を用いて、鶏卵卵黄より調製した糖ペプチドのシアロ糖鎖を合成したp-Formylphenyl-β-D-N-acetylglucosaminideに転移付加した。得られた糖鎖転移生成物であるp-Fomylphenyl基にシアロ糖鎖を付けた複合体を還元アミノ化反応によってキトサンに多価重合し、ウィルス感染阻害剤を合成した。この阻害剤を添加することによって、MDCK細胞へのさまざまなヒトインフルエンザウイルス(A/New Caledonia/20/99、A/Panama/2007/99株など)の感染に対する阻害能を調べた結果、シアロ糖鎖を有する鶏卵卵黄の糖ペプチドや血清フェツイン糖タンパク質の阻害能に比べて著しく強い阻害能を有することを見出した。その阻害能は鶏卵卵黄糖ペプチドの3000倍、血清フェツインの40倍であった。
|