2005 Fiscal Year Annual Research Report
セルロースの1級水酸基の酸化に始まる新しい生分解機構の解明
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17658075
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
磯貝 明 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (40191879)
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Keywords | セルロース / 生分解 / 酸化酵素 / セルラーゼ / 1級水酸基 / セロウロン酸 / リアーゼ / 加水分解酵素 |
Research Abstract |
セルロースの生分解機構については、セルラーゼによる加水分解のみが知られており、関連して多くの研究が進められている。一方、本研究では、セルロースの1級水酸基であるC6位の水酸基の酵素酸化がまず起こって親水性のカルボキシル基が導入され、続いてヒドロラーゼ型およびリアーゼ型の酵素によって低分子化、更に代謝されるという全く新しいセルロースの生分解ルートの存在を証明し、その機能と役割を解明しようとするものである。そこで、予備実験として微結晶セルロース粉末(高結晶化度の天然セルロースI型の結晶構造)および銅アンモニア溶液から再生したセルロース(低結晶化度のセルロースII型の結晶構造)をイオン交換水中、市販セルラーゼで処理した。微結晶セルロース粉末では3ヶ月間室温で処理しても可溶化しなかった。一方、再生セルロースは3ヶ月でほぼ完全に分解され、透明な溶液となった。従って、結晶化度はセルラーゼによる分解速度を大きく支配していた。そこで、再生セルロースのセルラーゼ処理溶液中にC6位の酸化、およびそのリアーゼによる分解によって生成したヘキセンウロン酸残基の存在の有無を検討した。ヘキセンウロン酸の有無を評価する方法として、呈色反応とUV検出器を付属させた溶出排除クロマトグラフによる検出(250nm付近にヘキセンウロン酸基の二重結合由来の吸収が現れるはずなので)を検討した。その結果、UV法の方が優れていることが判明した。しかし、防腐剤として微量添加したアジ化ナトリウムのUV吸収とも重複するため、現在、アジ化ナトリウム無添加の再生セルロースのセルラーゼ処理を進めている。今後、ヘキセンウロン酸基の存在が確認されれば、セルロースのC6位の酸化に始まる生分解機構が存在することを証明できるため、そのための基礎データの蓄積を進める。
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