2005 Fiscal Year Annual Research Report
農業技術革新および技術普及を促進する農業知的所有権制度のあり方に関する研究
Project/Area Number |
17658098
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
近藤 巧 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (40178413)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長南 史男 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (00113697)
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Keywords | 農業技術 / 知的所有権 / 研究開発 |
Research Abstract |
農業技術進歩を左右する要因として、農業試験研究制度、R&D支出、スピルオーバー効果、知的所有権制度などさまざまな要因があるが、知的所有権制度の経済的分析に焦点を据えた。これまで、ほとんどの先進国では基礎的科学研究に公的資金を投じてきた。そのため誰でもが、これらの研究成果に対して自由にアクセスすることができた。ところが、最近、知的所有権に関する法体系の整備されるにつれて、公的助成に依存した研究成果の特許化もめずらしいことではなくなった。さらに、開発研究や応用研究に力を注いできた民間企業が、次第に基礎研究にも資金を投じるようになった。生命科学の分野では、リサーチツール、マテリアル、知識そのものに対して保護を強化する動きが強まっている。そして、知的財産の保有は、公私を問わず、さまざまな経済主体によって、断片的に保有されているため「アンチコモンズの悲劇」、「特許の密林化」という問題が生じている。例えば、ビタミンAを多く含む「ゴールデン・ライス」の開発に際しては、30の機関が有する70もの特許に依存していた。知的財産権が過剰に保護されるため、クロスライセンスの取引費用が高く、市場メカニズムによっては解決できないと推察される。ただし、自家採取可能な大豆などの新品種の開発と普及は、知的所有権の強さに依存していた。知的所有権が強いほど、研究開発と普及の費用を回収できるからである。特許保護の期間・範囲が、科学技術研究の成果を次の段階の研究やイノベーションに結びつけることができるか否かを左右する基本的要因である。その他に、独占による弊害、重複投資の回避など、社会的経済厚生の最大化に影響を及ぼす要因を総合的に考慮すべきである。
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