2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17658155
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
原 敏夫 九州大学, 農学研究院, 助教授 (50117222)
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Keywords | 遺伝子 / 蛋白質 / 糖鎖 / プロテオーム / 生体機能利用 |
Research Abstract |
研究の目的:1998年、A.S.SpirinらがScience誌に連続式無細胞タンパク質合成系を報告して以来、無細胞タンパク質合成系は「タンパク質版PCR」として研究支援ツールとして認知され、in vitro工学として次世代ポストゲノム学の一角を占めるようになった。本申請者は、ガス圧を利用して単一生物種から調製した細胞抽出液を用いて翻訳反応と糖鎖付加反応が一段階で達成できる無細胞糖タンパク質合成系の構築に世界で初めて成功した。本申請課題では、無細胞糖タンパク質合成系に糖転移酵素を導入することにより生体内で実行されている糖鎖修飾プロセスを試験管内で再現し、試験管内での糖鎖改変技術として開発することを目的とする。 研究方法:本申請課題では、無細胞糖タンパク質合成系で付加された糖鎖構造を解析することを目的とし、モデル糖タンパク質としてエリスロポイチン(EPO)を用いた。 (1)鋳型mRNA合成:5'-末端側から3'末端方向にポリヘドリン遺伝子の5'-UTR、ニワトリリゾチームの細胞内移行シグナル、EPO遺伝子ポリヘドリン遺伝子の3'-UTRの順序で鋳型mRNAに対応するDNAを構築し、T7RNAポリメラーゼキットを用いて鋳型mRNAを合成した。 (2)無細胞糖タンパク質合成系でのEPO合成:昆虫細胞(Sf21)からミニボンベを用いて翻訳能と糖鎖修飾能を保持する細胞抽出液を調製し、(1)で作製した鋳型合成した宿主として糖鎖が付加されたEPOを合成する。EPOの検出は、EPO抗体を用いてウエスタンブロッテイング法にて行う。細胞抽出液はバイアル内に分注し、超低温フリーザー(三洋メディカルシステム(株)社製)にて-80℃で凍結標品として保存し、要時解凍し、EPO合成に使用した。 (3)糖鎖構造の解析:合成されたEPOを硫安塩析、カラムクロマトグラフィー及びHPLCを用いて精製プロセスを確立し、システム化する。EPOタンパク質を精製した後、トリプシン処理を施し、ペプチドフラグメント化し、TOF-MASに供してEPOに付加された糖鎖構造を解析した。 研究成果:ICEシステムによって合成したEPOをSDS-PAGEに供した後にウエスタンブロットによって分析した結果、EPOの合成が確認された。また脱糖鎖処理の結果からおよそ10KDaのN結合型糖鎖の付加が認められた。合成されたEPOはプロテアーゼプロテクションアッセイやミクロソーム画分の添加によって膜画分と介合していることが示唆された。さらに小胞体移行シグナル改変EPOの合成結果から小胞体移行シグナルは糖鎖付加能に影響があることが確認された。また合成したEPOを膜画分から解離させ、抗体カラムに供することによって純度を上げることに成功した。
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