2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17659015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関水 和久 東京大学, 大学院・薬学研究科, 教授 (90126095)
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Keywords | カイコ幼虫 |
Research Abstract |
本研究の目的は、カイコ幼虫における薬物の吸収・分布・代謝・排泄という体内動態について、ほ乳動物での結果と比較し、カイゴの実験動物としての有用性を評価することである。本年度はまず、いくつかの薬物について消化管からの吸収についての実験をおこなった。その結果、腸管吸収性をあげるために修飾残基を導入した抗生物質のプロドラッグ(セフカフェンピボキシル)の治療効果が、ほ乳動物と同様に見られることが証明された。このプロドラッグは、腸管から吸収された後、血液内でエステラーゼにより分解され、活性化タイとなると考えられる。この過程が、ほ乳類と同様にカイコ幼虫で起きていることが初めて分かった。この結果は、カイコがプロドラッグの治療効果を評価する上に有用であることを示している。さらに、本研究では、ウンベリフェロンをモデル薬物として、カイコ幼虫内での体内動態を検討した。その結果、ウンベリフェロンがグルコース抱合体として糞中に排泄されること、並びに、グルコース抱合反応が脂肪体のミクロゾーム画分中で起こることを組織培養並びに生化学的手法により明らかにした。さらに、7エトキシクマリンをカイコ体液に注射することにより、糞中にウンベリフェロンのグルコース抱合体が排泄されることを証明した。この結果は、7エトキシクマリンがP450による脱エトキシ反応を受けてウンベリフェロンとなることを示している。昆虫の体内において、殺虫剤以外の薬物がP450による薬物代謝反応を受けることが初めて示された。今後はさらに、種々の薬物代謝反応を同定することが必要である。また、代謝反応にあずかる酵素の同定並びにその分子生物学的研究に取り組むことを計画している。
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