2006 Fiscal Year Annual Research Report
プロスタグランジンD_2産生調節による外傷性大脳皮質損傷の拡大防止と修復促進
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17659022
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Research Institution | Osaka Bioscience Institute |
Principal Investigator |
有竹 浩介 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究員 (70390804)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
裏出 良博 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究部長 (10201360)
黄 志力 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究副部長 (10321704)
毛利 育子 大阪大学, 子どものこころの発達研究センター環境関連分子解析部門, 特任助手 (70399351)
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Keywords | 脳神経疾患 / 薬理学 / 脂質 |
Research Abstract |
本研究は外傷性脳損傷直後にPGD_2が過剰に産生されて炎症が拡大されるメカニズムの解明である。本研究を実施し、以下の結果を得た。 1)外傷性脳損傷後のPGD_2過剰産生とPGD合成酵素発現増強 マウスの大脳皮質に外傷を与えると、傷害の10分以内に通常の1000倍以上のPGD_2が産生される。我々の作製した2つのPGD合成酵素(造血器型とリポカリン型)の遺伝子欠損マウスを用いて脳損傷モデル実験を実施し、傷害初期のPGD_2産生は、主としてマイクログリアに発現する造血器型PGD合成酵素によって触媒されることが明らかとなった。また、損傷部位では2日目をピークとして造血器型、リポカリン型のいずれの酵素も発現が増強することが判明した。 2)外傷性脳損傷に対するPGD合成酵素阻害薬、受容体拮抗薬の抑制効果 造血器型PGD合成酵素特異的阻害薬(HQL-79)の投与あるいは造血器型PGD合成酵素欠損マウスは損傷直後に過剰に産生されるPGD_2を有意に抑制した。損傷後2日目をピークとする組織傷害(浮腫)やアストロサイト活性化を抑制することを薬理学的に証明した。損傷部位の遺伝子の変動を調べたところ、HQL-79投与はマイクログリアあるいは浸潤マクロファージの活性化の指標であるIba-1遺伝子発現を有意に抑制した。 過剰産生されたPGD_2が2つの受容体(DP1、DP2)のいずれを介して炎症の拡大に作用するのかをそれぞれに特異的な拮抗薬(BWA868C,ラマトロバン)を用いて損傷に対する効果を調べたところいずれの化合物も有意に組織損傷を抑制した。しかしながら、HQL-79の浮腫抑制効果が、受容体拮抗薬の投与に比べて強力であった。 以上の結果から損傷後に過剰に産生されたPGD_2はDP1、DP2の受容体を介して炎症を拡大させることが示された。造血器型PGD合成酵素阻害薬は新たな外傷性脳損傷治療薬となる。
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Research Products
(5 results)