2005 Fiscal Year Annual Research Report
プリオンへの感染および異常型プリオン蛋白質の産生におけるスフィンゴ糖脂質の役割
Project/Area Number |
17659024
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
萩原 健一 国立感染症研究所, 細胞化学部・第一室, 室長 (40192265)
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Keywords | プリオン / スフィンゴ糖脂質 / コレステロール / neuro2a |
Research Abstract |
正常型プリオン蛋白質(PrP^C)の高次構造の変換により生じる異常型プリオン蛋白質(PrP^<Sc>)はプリオン病の感染・発症に深く関与する。プリオン感染細胞におけるPrP^<Sc>への変換は、細胞膜の「raft」と称されるコレステロールやスフィンゴ脂質に富むドメイン上あるいは初期〜後期エンドゾームにおいて起こると一般に考えられており、細胞膜構成脂質(特にコレステロール、スフィンゴ糖脂質)が「PrP^C→PrP^<Sc>」の変換に何らかの役割を演じている可能性がある。この点を解析し、初年度は以下の成果を得た。 1)プリオンに感染したマウス神経芽種細胞(neuro2a細胞)に対してグルコシルセラミド合成酵素の阻害剤(PDMP)を培地に添加することにより、スフィンゴ糖脂質を減量させつつセラミド/スフィンゴミエリンを代謝的に増量させるとPrP^<Sc>の細胞内蓄積量が低下するという現象を追試・確認した。一方、脳由来の粗ガングリオシド画分を感染N2a細胞に添加した場合にも、PrP^<Sc>の蓄積量が低下することを見いだした。用いた粗ガングリオシドの主要成分であるGM1/GD1単独では、PrP^<Sc>の蓄積量の低下は認められなかった。糖脂質を内因的に減量させても外因的に増量させても、PrP^<Sc>の細胞内蓄積量が低下するという糖脂質の作用機作について、次年度以降も詳細な解析を継続する。 2)neuro2a細胞において、コレステロール生合成経路上のデヒドロコレステロール還元酵素の阻害剤(U18666A)がPrP^<Sc>の産生抑制作用をもつことを見いだした。ED50は約25nMであり、抗プリオン薬として臨床治験が試みられているキナクリンのED50値の1/20〜1/40であった。U18666Aを継続的に若齢マウスへ投与すると、デヒドロコレステロール還元酵素の阻害によりステロール含量が一過性に変動するという過去の代謝研究がある。そこで、プリオン接種マウスに対してU18666Aを腹腔投与(5mg/kg)したが、今回の実験条件においてはステロール含量の変動は観察されなかった。この理由のためか、in vivoでの抗プリオン活性は認められなかった。
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Research Products
(1 results)