2005 Fiscal Year Annual Research Report
角化細胞が3次元の組織構造を形成する分子機序の研究
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17659112
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
加藤 光保 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (20194855)
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Keywords | 組織形成 / 角化細胞 / 重層扁平上皮 / 多層化 / AP1 / 3次元培養 |
Research Abstract |
細胞が組織を形成する機序を解明することは実験病理形態学の最も重要な研究課題のひとつである。本研究は、ヒト角化細胞株HaCaTを空気と培養液の界面で培養し表面を空気に曝す(3次元培養法)と重層扁平上皮構造を形成することに関与するシグナル経路を明らかにすることを目的としている。 転写因子AP1は、がん遺伝子として発見されたことなどから細胞増殖に関与することが示唆されているが、この活性に優勢抑制活性を示すc-JunやJunBのN末端欠失変異体を発現させたHaCaT細胞を作製したところ、AP1活性が抑制された。この細胞は、通常の培養条件でも3次元培養条件でも元の細胞と増殖に差がみられなかった。しかし、この細胞は、3次元培養を行っても多層化ができなくなっていた。そこで、HaCaT細胞を3次元培養した際に、発現レベルが変化する遺伝子をDNAチップを用いて網羅的に検索した。また、これらの中から、AP1活性を抑制した細胞では、3次元培養を行っても変化が起こらない遺伝子をRT-PCR法を用いて同定した。同定された遺伝子の中には、接着分子、酸化還元酵素、脂肪酸結合タンパク質などがあり、これらの中に、空気への暴露による角化細胞の重層構造形成に関与する遺伝子があることが期待される。 また、ヒト角化細胞株HaCaTに発現しているAP1の構成分子であるc-Jun, JunBあるいはFra-2などをsiRNA法でノックダウンした細胞を樹立し、どのAP1分子が角化細胞の多層化に関与しているかの同定を進めていいる。さらに、空気への暴露が角化細胞の重層化を誘導する経路に関与する分子の候補となるASK-1の優勢抑制変異体を発現させたHaCaT細胞を作製するなど、AP1の上流のシグナル経路を決める計画も進めているが、これまでのところ上流の分子は同定できていない。
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