2005 Fiscal Year Annual Research Report
パルボウイルスによる宿主遺伝子のエピジェネティクス
Project/Area Number |
17659134
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
八神 健一 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (40166476)
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Keywords | パルボウイルス / NS / エピジェネシス / 宿主遺伝子 |
Research Abstract |
パルボウイルスは、胎児死亡、肝炎、造血障害、関節炎等を引き起こし、自己免疫病との関連も示唆されている。また、抗腫瘍活性が知られ、これらの病態や抗腫瘍活性とウイルス初期タンパクであるNSの関連が疑われているが、病態発現や抗腫瘍活性のメカニズムは未解明である。著者は、独自に分離した新規パルボウイルスがTリンパ腫細胞C58(NT)Dに感染した後、耐過細胞C58(NT)D/Rが出現すること、耐過細胞は、細胞接着性の亢進、アポトーシス抵抗性の獲得、造腫瘍性の低下などの形質変化を生じ、CNTFRαの発現亢進が見られた。また、その形質はウイルス消失後も子孫細胞に伝達した。そこで、NSにより宿主遺伝子がエピジェネティックな発現修飾を受けるとの仮説をたて、この証明のため、C58(NT)DをDNAメチル化阻害薬及びヒストン脱アセチル化阻害薬で処理した後、CNTFRαの発現を解析した。その結果、C58(NT)D細胞において濃度依存的にCNTFRαの発現が誘導され、CNTFRαの発現がDNAのメチル化やピストンのアセチル化により制御されていることが示唆された。さらに、NSを発現させたC58(NT)D及びC58(NT)D/RにおいてCNTFRα遺伝子のヒストンH3領域がアセチル化されていることをクロマチン免疫沈降法により確認した。 本研究は、パルボウイルスNSが宿主遺伝子のヒストンをアセチル化することにより、様々な形質の変化を誘導することを初めて明確にし、このメカニズムが本ウイルスの多様な病原性や抗腫瘍性に関与することを示唆した。また、ウイルス因子が宿主遺伝子に対しエピジェネティックな修飾を行うことを示した報告はこれまでになく、ウイルスと宿主の相互関係を解釈する上で、新たな視点を提供するものである。
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Research Products
(1 results)