2005 Fiscal Year Annual Research Report
成人T細胞白血病ウイルスにおける新たな病原性発現制御機構の検討
Project/Area Number |
17659136
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
今村 潤 高知大学, 医学部附属病院, 講師 (30232614)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上岡 樹生 高知大学, 医学部, 助手 (00274374)
田口 博國 高知大学, 医学部, 教授 (20033350)
杉浦 哲朗 高知大学, 医学部, 教授 (50171145)
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Keywords | HTLV-1 / ATL / 発癌機構 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
我々は10余年前にHTLV-1ゲノムのいわゆるpX領域の中に新たな遺伝子コード領域(open reading frame ; orf)が存在する可能性を見い出した。この新しいorfはHTLV-1ゲノムのいわゆるpX領域にあるtax/rex遺伝子からスプライスアウトされる未使用領域のほぼ全長に渡ってbottom strand側に存在するもので、9kbという限られたゲノムしか有しない本ウイルスが使用しない領域を保存しているという未解明の問題を解決した。従来retrovirusではanti-sense方向への遺伝子の配置は存在しないと考えられており、全く新しい遺伝子の配置と考えられる。さらにこのorfから翻訳される蛋白はいわゆるleucine zipperを有しており、遺伝子の発現制御に関わる可能性が高い。我々はこの遺伝子をxat(pX region Anti-sense Transcript)遺伝子と名付け検討を続けて来た。 本年度、我々はHTLV-1感染細胞株MT-1,MT-2,ATL-1Kにおいて、poly-A RT-PCRを用いて本遺伝子が発現していることを確認した。前後して他グループから本遺伝子を検討した結果が発表され、hbz遺伝子と名付けられた。HBZ蛋白はleucine zipper(basic zipper)構造を有しており、遺伝子発現制御などの機能性を有する可能性が高い。この遺伝子はHTLV-2やHIVでは存在せず、当初の仮説通りHTLV-1のユニークな性質であるT細胞の不死化・白血化に関与する可能性高い。 さらに、我々は同遺伝子/蛋白の機能の検討として、まず形質の大きく異なるHTLV-1感染細胞株MT-2及びMT-4の同遺伝子の発現を比較検討した。その結果同遺伝子は両株ともに発現していることが判明し、発現量は大幅には異ならないことが判明した。現在、siRNAを利用して同遺伝子の発現を抑制し、感染細胞株の形質変化・ウイルス発現量の変化につき検討を行っている。 本研究はATL発症制御を行う新たなメカニズムがHTLV-1自身に存在する可能性を証明しようとするものであるが、本年度の結果から新たな存在様式を有するhbz/xat遺伝子の発現と同蛋白の機能の可能性が見いだされ、それによりATLの発症機序の解明とその治療への応用、さらにはHTLV-1のみならずHIVなどを含むretroviridaeにおける新たな生物学的特性の解明への端緒を得たものと考える。
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