2006 Fiscal Year Annual Research Report
分子病態検査学的手法による漢方医学診断(証)の解明
Project/Area Number |
17659201
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
仁井見 英樹 富山大学, 医学部附属病院, 助手 (50401865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北島 勲 富山大学, 大学院医学薬学研究部, 教授 (50214797)
嶋田 豊 富山大学, 大学院医学薬学研究部, 教授 (80251891)
大塚 稔久 富山大学, 大学院医学薬学研究部, 助教授 (40401806)
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Keywords | 漢方医学 / 証 / 分子病態 / 転写因子 / 関節リウマチ / cDNAマイクロアレイ / 桂枝加朮附湯 / HLA-DRB1 |
Research Abstract |
本研究の目的は、西洋医学で重視される「根拠に基づいた医療(EBM)」や「遺伝子情報に基づいた医療(テーラーメイド医療)」の考えを漢方医学の「証」の診断に照合することで、「証」の分子病態を解析することである。目的達成の為、平成18年度は以下の研究を実施した。 cDNAマイクロアレイを用いた関節リウマチにおける「証」検証研究 富山大学和漢診療科を受診する患者群から、RA患者を診察し、ACR score set,年齢、性、合併症病名、血圧、白血球数、血小板数、CRP, RF,赤沈、MMP-3,の検査を投薬前後で実施した。尚、承認された倫理委員会要項に則り採血と遺伝子解析に関するインフォームドコンセントを得た。 上記選考基準を満たし、「桂枝加朮附湯」服用(一ヶ月)にて、症状が緩和した患者(3例)と緩和しなかった患者(3例)の桂枝加朮附湯服用前と後の末梢血リンパ球を検体とした。 3例ずつのリンパ球検体からmRNAを抽出し、それぞれの検体を治療前・後、responder/non-responderに分けてduplicateでマイクロアレイ解析を行った。尚、t-test p-value<0.05のcut off値で統計解析を施行した。 以上、cDNAマイクロアレイによる遺伝子発現プロファイルの解析により、以下の研究成果を得た。 (1)漢方薬有効例で服用前後に特異的に変動した(無効例では変動しない)54の遺伝子を明らかにした。 (2)漢方薬有効例で特異的に変動し、関節リウマチ(RA)特異的な16の遺伝子を明らかにした。 (3)得られた16の遺伝子プロファイルは、HLA遺伝子群や、γ-globulin関連遺伝子が多く含まれており、RAの病態メカニズムの解明と、漢方薬(桂枝加朮附湯)の薬効メカニズムの解明に寄与することが期待される。 (4)無効例に比較して有効例で投薬前に発現差があり、桂枝加朮附湯で発現が変動するRA関連遺伝子として、11の遺伝子を明らかにした。これらの遺伝子発現を漢方薬投薬前に調べることにより、漢方薬が有効な患者と無効な患者を投薬前に判断できる可能性がある。今後、漢方薬薬効を診断する遺伝子診断システムの確立が期待される。 (5)これらの抽出した遺伝子発現プロファイルの中で、特にHLA-DRB1を中心に、漢方薬の分子レベルでの薬効メカニズムを考察した。HLA-DRB1はRAの病態に関与するHLAII型遺伝子として知られており、自己抗体の産生に関与すると近年報告されている。漢方薬(桂枝加IL附湯)が有効な患者群では、無効な患者群に比較して2倍程HLA-DRB1の発現が上昇しており、漢方薬投薬によってその発現を50%まで減らすことが出来る。この作用が、HLA-DRB1による抗原提示作用の減少につながり、RAの病態改善(炎症の改善)に導くものと考えられる。
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Research Products
(7 results)