2006 Fiscal Year Annual Research Report
骨髄間葉系幹細胞(MSC)を用いた炎症性腸疾患の治療法開発
Project/Area Number |
17659217
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
後藤 啓 札幌医科大学, 医学部, 助手 (40381272)
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Keywords | 骨髄間葉系幹細胞 / 炎症性腸疾患 |
Research Abstract |
【背景】ドナー由来骨髄細胞は,重症GVHDを発症したレシピエント腸上皮細胞あるいは上皮下筋線維芽細胞に認められる.しかし,これらの骨髄由来細胞の起源,機能,細胞運命は未だ明らかにされていない.【目的】実験腸炎モデルを用いて,ドナー由来骨髄間葉系幹細胞(MSC)のレシピエント大腸組織における分布,機能,細胞運命を検討した.【方法】ブスルファン(BU)単回投与による骨髄不全モデルを作成し,DSS腸炎に対する感受性を検討した.また,eGFP-labeledMSC治療の有効性を検討し,抗eGFP抗体によりドナー由来MSCを同定した.【結果】BU誘導急性骨髄不全モデルにおいては,DSS腸炎に対する感受性が亢進した.急性骨髄不全モデルに惹起した1%DSS腸炎に対しeGFP-labeledMSCを移植した結果,体重変化,腸管長,組織学的評価において,コントロール群に比べ,MSC投与群の治療効果が有意差をもって確認された.しかし,tnf・,ill・,inf・,illO mRNA発現量には有意差が認められなかった.さらに,レシピエント大腸組織の連続切片を抗eGFP蛍光抗体で免疫染色した結果,腸上皮幹細胞域に,eGFPの発現が認められたことより,MSCは腸上皮幹細胞に取って代わることが証明された.【考察】実験腸炎モデルにおけるMSCの治療効果が初めて確認され,さらに,MSCが新たに腸上皮幹細胞として機能するという興味深い現象の機序解明が,腸管修復過程における骨髄の役割の解明への第一歩となると考えられた.今後MSC治療が炎症性腸疾患に対する,新たな可能性を秘めた治療法となることが期待された.
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