2006 Fiscal Year Annual Research Report
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17659316
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
森島 恒雄 岡山大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教授 (90157892)
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Keywords | インフルエンザ / インフルエンザ脳症 / NSAIDs / メフェナム酸 / ジクロフェナクNa / 脳血液関門 |
Research Abstract |
インフルエンザ脳症の発症が、解熱剤である一部の非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)で増悪することは疫学的に検証されているが、そのメカニズムの詳細は未だに明らかではない。一方で、インフルエンザ脳症ては血中サイトカインレべルの著明な上昇と脳微小血管内皮の傷害による血液脳関門(BBB)破綻を特徴とする臨床像を呈することから、一部のNSAIDsにおけるインフルエンザ急性脳症の増悪には、BBB破綻による薬剤の脳移行性の変化が、ジクロフェナク(Dic)およびメフェナム酸(MA)のインフルエンザ脳炎・脳症の重症化に関与している可能性が考えられる。 そこで、我々は、解熱剤として使用されるDic、MA、アセトアミノフェン(Ace)の3つのNSAIDsの薬物動態についての研究を進め、その組織移行メカニズムについての検討を行ってきた。 (1)昨年の検討ては、インフルエンザ脳炎・脳症に類似した高サイトカイン状態を引き起こす病原性大腸菌O157の毒素であるSLT-IIを投与した動物を用い、これら3つのNSAIDsの脳移行性がどのように変化するかについての検討を加え、高サイトカイン状態によるBBB破綻が、Dic、MAの脳移行増加を引き起こすことを明らかにした。 (2)本年度は、これら3剤の未梢組織移行について検討として、肝組織移行性の検討を行った。その結果、Dic、MAおよびAceの血漿中濃度に対する肝組織中濃度は、Dicで1.26±0.11、MAて1.89±0.34、Aceで1.46±0.29であり、肝組織におけるこれらのNSAIDs濃度の測定はそれぞれの血中濃度を予測するのに有用な指標であることが明らかになった。 今後は、今回の萌芽研究の結果を、臨床におけるNSAIDs濃度評価への応用すると共に、インフルエンザ脳症動物モデルを用い、NSAIDsによる神経障害の重症化に関連する因子についてさらに検討を行っていく予定である。
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