2006 Fiscal Year Annual Research Report
末梢血リンパ球を指標とした脳機能評価のためのin vitro実験系の確立
Project/Area Number |
17659349
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高橋 誠 新潟大学, 医歯学系, 助手 (40323985)
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Keywords | 末梢血リンパ球 / PBMC / 覚醒剤 / バルプロ酸 / エビジェネティクス |
Research Abstract |
末梢血単核球(PBMC)の遺伝子発現に関する初年度の基礎的検討をもとに、1.覚醒剤によるPBMCのドーパミン再取り込み機構の変化、2.バルプロ酸による遺伝子発現の変化について調べた。いずれの研究にも健常男性20名から得たPBMCを用い、培養条件下に薬剤を加えて、24時間後の遺伝子発現の変化を検討した。 1.覚醒剤によるPBMCのドーパミン再取り込み機構の変化 覚醒剤添加によるドーパミントランスポーターと小胞モノアミントランスポーター2の遺伝子発現変化について一定の傾向を捉えることはできなかった。しかし遺伝子発現量は覚醒剤濃度依存的に増減し、この濃度反応性には個体問で大きなバラツキが認められた。両遺伝子プロモーター領域のハプロタイプの違いがこのような個体差に影響する可能性があり、今後、遺伝子型解析を含めて再検討する必要があると考えられた。 2.バルプロ酸による遺伝子発現の変化 バルプロ酸はピストン脱アセチル化酵素阻害剤である。バルプロ酸の標的遺伝子を検索するため、バルプロ酸服用中の統合失調症および双極性障害患者20例と非服用群19例の末梢血を用いて、遺伝子発現プロファイリング解析を行ったところ、43の遺伝子がバルプロ酸と関連して変動することが分かった。これらのうち11遺伝子についてPBMCにおけるバルプロ酸反応性を検討した。TaqMan PCR法による遺伝子発現解析の結果、9遺伝子ではバルプロ酸濃度依存的に2〜10倍の発現量増加が認められた。一方、1遺伝子では逆に濃度依存的な発現低下がみられた。これらの遺伝子はバルプロ酸感受性遺伝子として、精神疾患のエピジェネティックな異常に関与している可能性がある。 以上の結果から、PBMC培養は向精神薬による遺伝子発現変化を検討するうえで有用な実験系であることが確認された。バルプロ酸実験の結果については、現在論文作成中である。
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