2005 Fiscal Year Annual Research Report
攻撃行動制御因子の単離同定と神経生理機能に関する研究
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17659350
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
松本 欣三 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (10114654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東田 道久 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 助教授 (20207525)
村上 孝寿 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 助手 (00377269)
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Keywords | 長期隔離飼育ストレス / 攻撃行動 / 情動行動障害 / γアミノ酪酸神経系 / ペントバルビタール / 遺伝子発現 / DNAアレイ解析 / 内在性因子 |
Research Abstract |
本研究は、長期隔離飼育ストレス負荷動物に特徴的に発現する攻撃行動を情動障害動物モデルとして用い、攻撃性亢進に関与する脳内因子の単離同定とその脳内生理機能の解析により、ヒトの"キレる"と呼ばれる敵意性や攻撃性の発現に関わる脳病態生理と脳内分子神経機構を実験的に解明することを目的とする。 隔離飼育ストレス負荷は先の我々の方法に準じておこなった。すなわち3週齢雄性ICRマウスを1週間動物室で群居飼育した後、群居(4匹/ケージ)群または個別飼育群に分けて飼育を継続した。その6週間後に脳内γ-アミノ酪酸(GABA)神経系機能変化と攻撃性亢進を行動学的に評価した。GABA神経系機能の評価ではペントバルビタール-Na(50mg/kg)を腹腔内投与して正向反射消失時間を測定した。攻撃性亢進はresidentケージにintruderマウスを20分間入れて攻撃行動の発現時間を測定した。行動実験終了後、群居群および隔離飼育群より前脳皮質及び嗅球を摘出し、各5匹分を合わせて全RNAを抽出した。IntelliGene III Mouse CHIPを用いて網羅的遺伝子解析を行った。 隔離飼育群の正向反射消失時間は群居飼育群と比較して約40%短縮し、GABA神経系機能の低下が確認された。隔離飼育群では顕著な攻撃行動が発現したが、同期間、群居飼育群では攻撃行動は認められなかった。網羅的解析を行った4445種遺伝子のうち、発現が1.5倍以上増加した遺伝子は前脳皮質では60種、嗅球では43種が検出された。一方、発現が50%以上低下した遺伝子は前脳皮質では13種、嗅球では18種が検出された。このうち精神疾患や神経機能との関連性が示唆されている遺伝子は21種検出された。これらの成績から、長期隔離飼育ストレス負荷によって脳内遺伝子の発現変化を生じ、これが本ストレス負荷動物における攻撃性亢進に関わる可能性が推察された。
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