2005 Fiscal Year Annual Research Report
胆管前駆細胞の特性解析と胆管形成を伴う高次機能肝組織再構築に関する研究
Project/Area Number |
17659408
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
猪飼 伊和夫 京都大学, 医学研究科, 講師 (60263084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 英明 京都大学, 医学研究科, 助手 (50372587)
安近 健太郎 再生医科学研究所, 附属幹細胞医学研究センター, 産学官連携研究員 (00378895)
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Keywords | 肝前駆細胞 / 間葉系細胞 / フローサイトメトリー / 胆管前駆細胞 / 分化誘導 / 未分化状態維持 |
Research Abstract |
これまで我々は独自の方法でマウス胎仔肝より効率よく肝前駆細胞を分離する手法を開発し、蛍光励起セルソーターによりこの細胞集団を細分化してCD49f(+)の肝前駆細胞とThy1(+)細胞を同定・分離した。さらにThy1(+)細胞の中に存在するGP(+)細胞は胆管細胞特異的なマーカーCFTRを発現し、胆管前駆細胞である可能性が示唆されたことから、本年度はマウス胎仔肝より蛍光励起セルソーターを用いてThy1(+)GP(+)およびThy1(+)GP(-)細胞を分離し、分離直後から培養過程でのRT-PCRおよび免疫染色にて遺伝子および蛋白発現変化を検討した。特にCK7、CK19、Notch1、Notch2、Jagged-1などの胆管細胞のマーカー発現の経時変化により胆管細胞への分化の有無を検討した。その結果、Thy1(+)GP(+)細胞はEl3.5胎仔肝由来Thy1陽性間葉系細胞の約16%を占め、両細胞共にCFTR以外の上記胆管細胞特異的マーカーの明らかな発現を認めなかった。さらに、両細胞共にαSMA、desmin、vimentinの発現を認めたが、血管内皮細胞、星細胞、クッパー細胞のマーカー発現を認めなかった。従って、Thy1(+)GP(+)細胞は胆管前駆細胞の可能性よりも、幼若な間葉系細胞と考えられた。一方、Thy1(+)GP(+)細胞を用いたin vitroにおける肝組織構築の検討を行う過程で、CD49f(+)肝前駆細胞とThy1(+)GP(+)およびThy1(+)GP(-)細胞との接触共培養を行った。その結果、Thy1(+)GP(+)細胞と7日間共培養したCD49f(+)肝前駆細胞はPAS陽性となり、成熟肝細胞マーカー(Glucose-6-Phosphatase, Tyrosin-aminotransferase, Tryptophan-2,3-dioxygenase)が有意に発現上昇し、成熟肝細胞に類似の超微細構造を呈した。一方、Thy1(+)GP(-)細胞との共培養では上記結果を認めず、Thy1(+)GP(-)細胞の培養上清中ではThy1(+)GP(+)細胞と共培養したCD49f(+)肝前駆細胞のPAS陽性率が低下した。本研究により、E13.5胎仔肝由来Thy1陽性間葉系細胞はThy1(+)GP(+)細胞とThy1(+)GP(-)細胞から構成され、前者は肝前駆細胞の成熟化を促進し、後者は抑制することが示された。今回分離したThy1(+)GP(+)およびThy1(+)GP(-)の各間葉系細胞は肝前駆細胞の成熟化過程の解明に有効なツールとなる可能性があると考えられ、今後、さらに詳細な特性解析を検討している。
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