2005 Fiscal Year Annual Research Report
プラチナを使用しない新規動脈瘤治療用塞栓物質の開発
Project/Area Number |
17659439
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯島 明 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (00343137)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄島 正明 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (80376425)
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Keywords | 脳神経疾患 / 脳動脈瘤 / 血管内治療 / コイル塞栓術 / 新規塞栓物質 |
Research Abstract |
研究の中間報告 脳動脈瘤血管内治療で使用されているプラチナコイルに代わる新規塞栓物質を開発する目的で研究を進めている。 新規コイル素材として比較検討対象物質としているのはPVA(ポリビニルアルコール),PGA(ポリグリコール酸),PLA(ポリ乳酸)等既に他の医療用具でのヒト生体内使用実績のある生体分解ポリマー等の検討を行った。いずれの素材を用いた場合においても動脈瘤内に留置する目的で最終段階のコイル切断に関する有効な手段が確立できない。日本国内で唯一動脈瘤治療用コイル作成メーカーであるカネカメディックスの協力を仰ぐことが可能となった。現行脳動脈瘤治療用コイル離脱システムとして有効であるものは(1)コイルデリバリー用のワイヤーと生体間に微小電流を通電する電気離脱型システム。(2)チューブ先端に機械的に組み込んだコイルをチューブ内の圧上昇器具によって離脱する機械式離脱システムが主流である。我々のシステムでは、カネカメディックス特許である(1)にあたる切断メカニズム(PVA接続部位を微小電流を用いて切断)を使用することになった。残念ながら、このシステムではプラチナコイルを接合したPVAの一点での切断のみ可能であり全長をPVAで作成したコイルの切断は不可能である。 我々は、このシステムを採用することが本研究で開発するコイルの実用に向けての最短距離と確信する. 初年度科研費の大部分はこのシステムと動脈瘤内留置カテーテル等デバイスへの支出にあてられた。 現在の研究の中心は以下の点に移る。 現在臨床現場で中心的役割をになうコイル素材はプラチナ/タングステン合金である。プラチナに対する生体反応はきわめて低いが、合金中で8%(重量%)を占めるタングステンに対する生体の反応は未知数である。プラチナ合金に8%タングステンが含まれていることすら一般的には知られていない。プラチナタングステン合金に変わる素材としてメリットが最も見込めるものはチタンである。生体内使用可能な金属で生体反応が最も少ない物質がチタンであるためである。整形外科・脳神経外科領域で数々の金属医療素材がチタンに置き換わる中、これまでチタンを用いたコイルが入手不能であった原因はチタンの加工困難性にある。0.06mm径の伸線の作成が動脈瘤治療用コイルの作成には不可欠であり、一般的な加工技術では不可能である。この技術は東京工業大学精密高額研究所先端材料部門細田秀樹先生の協力により可能となった。現時点での問題点は放射線透視下でいかにこの素材の視認性を確保するかである。この問題点を解決しさえすれば人体生体内での使用は可能となる。細田秀樹先生の専門であるNi free形状記憶合金を用いた動脈瘤塞栓物質の作成も同時進行中である。形状記憶合金の特性を生かしこれまで治療困難であった不規則な形状の脳動脈瘤の治療を可能とするデバイスも次の候補としている。 3年間の研究期間ブタ動脈瘤モデル・試作コイル・アプローチシステムを用いたコイル留置とフォローアップもって最終的な治療効果・安全性を確立することが可能と判断する。
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