2007 Fiscal Year Annual Research Report
プラチナを使用しない新規動脈瘤治療用塞栓物質の開発
Project/Area Number |
17659439
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯島 明 The University of Tokyo, 医学部・附属病院, 助教授 (00343137)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高井 敬介 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (70376424)
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Keywords | 脳神経疾患 / 脳動脈瘤 / 血管内治療 / コイル塞栓術 / 新規塞栓物質 |
Research Abstract |
脳動脈瘤血管内治療で使用されているプラチナコイルに代わる新規塞栓物質を開発する目的で研究をすすめた。 新規コイル素材として比較検討対象物質としているのはPVA(ポリビニルアルコール),PGA(ポリグリコール酸),PLA(ポリ乳酸)等既に他の医療用具でのヒト生体内使用実績のある生体分解ポリマー等の検討を行った。いずれの素材を用いた場合においても動脈瘤内に留置する目的で最終段階のコイル切断に関する有効な手段が確立できなかった。日本国内で唯一動脈瘤治療用コイル作成メーカーであるカネカメディックスの協力を仰ぐことができ、コイル離脱システムとしてコイルデリバリー用のワイヤーと生体間に微小電流を通電する電気離脱型システム;PVA接続部位に微小電流を流して切断する手法を使用することが可能となった。残念ながら、このシステムではプラチナコイルを接合したPVAの一点での切断のみ可能であり全長をPVAで作成したコイルの任意の点で切断することはできなかった。実際の体内留置、切断のシステムは以上の手技手法で可能となったが、透視装置で動脈瘤内に新規塞栓物質を留置するためには放射線不透過でなければ手技が成立しない。上記素材に放射線不透過となる性状を持たせるため、実際に人体に用いられている複数の素材とその濃度を検討した。結果、タンタルパウダー(FDAにおいて脳動静脈奇形治療目的の使用が認められたOnyxに使用されている放射線不透過素材と同一)60%が最も適しているという結論に至った。この濃度で、動脈瘤内でマイクロカテーテル先端部から瘤内に挿入できるコイル作成が可能であった塞栓物質はPVAであった。以上の切断システム、放射線不透過物質、素材を用いて実際の新規塞栓物質を作成した。 残念ながら、与えられた3年間の研究期間ブタ動脈瘤モデルへの留置に至らず、試作コイルを動脈瘤シリコンモデルで動脈瘤内挙動と塞栓率を評価するにとどまった。PVAはその性質から、形状記憶が困難でありループ作成ができなかった。スチームシィピングを行い一定の形状を留置直前に持たせることは可能であった。Balloon assist technique(動脈瘤頚部母血管に一時的にバルーンカテーテルを用いて動脈瘤外母血管への塞栓物質逸脱を抑止する手法)を用いても瘤内に新規塞栓物質をとどめる性状をもたせることはできなかった。Stent assisted coil embolization((動脈瘤頚部母血管に恒常的にステントを留置し動脈瘤外母血管への塞栓物質逸脱を抑止する手法)を用いることで瘤内塞栓術は可能となった。新規塞栓物質の体内での使用はこの時点で現在、海外ではステント留置による整流効果を利用した動脈瘤治療が臨床試験に至っている。 国外の学会発表では、ステント留置単独による動脈瘤消失効果は完全でなく、従来のプラチナコイルを動脈瘤内に置かざるを得我々が開発した新規塞栓物質はPVAが本来持つhemostaticな性質を活かし、この手技に用いることでより一層の治療効果を生期待される。今後は、ジェル状のPVAを作成することで、液体塞栓物質-固形塞栓物質の中間的な新規治療の展開に発展させこれまで治療困難、もしくは治療不可能であった巨大動脈瘤や血栓化動脈瘤の治療を行うことを最終目標とする。
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Research Products
(18 results)