2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17659483
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
西川 光一 群馬大学, 医学部, 講師 (00334110)
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Keywords | GABA / シナプス伝達 / 揮発性麻酔薬 / パッチクランプ法 / シナプス可塑性 / 海馬スライス標本 / 長期増強現象 / 細胞外記録法 |
Research Abstract |
揮発性麻酔薬は、主に興奮性シナプス伝達の抑制、抑制性シナプス伝達増強作用によって可逆的に中枢神経に作用する。しかし最近、一部の麻酔薬は神経細胞死を引き起こし、さらに記憶や学習能力まで障害させるという注目すべきデータが報告された(Journal of Neuroscience 2003;23:876-82)。この結果は、可逆的であると考えられる全身麻酔薬が、中枢神経細胞に対して非可逆的な作用があるかもしれないことを示唆している。しかし、麻酔薬の記憶や学習など脳高次機能の修飾に関しては、基礎的実験報告が極めて少ない。研究目的は、ラットの海馬スライス標本で神経細胞間でのシナプス可塑性(LTP)を誘導し、脳高次機能に対する揮発性麻酔薬の効果について検証することである。 LTPの誘導: CA3領域細胞の軸索(Schaffer側枝)を電極刺激して、CA3領域の錐体細胞層で細胞外記録法を用いて興奮性シナプス電圧(field EPSP)を記録した。条件刺激(100Hz)を行った後、持続的にシナプス電位の振幅が長時間にわたって上昇し、1時間以上にわたってコントロール伝達の150%以上上昇した場合にLTPの誘導がおこったものとした。条件刺激の前に揮発性麻酔薬(20分間)をあらかじめかん流投与してLTP誘導を試みると、電圧の振幅は有意に減少した。この結果は、臨床濃度の揮発性麻酔薬が存在した場合、麻酔薬による抑制シナプスの増強かあるいは興奮性シナプス抑制作用が、可塑性誘導機構(の少なくとも一部)を阻害することを示唆している。次年度は、このメカニズムを解明するために、glutamate receptor blocker,GABA receptor blockerの存在下でどうなるか、またLTPの維持には麻酔薬はどう影響するかを検討する必要がある。
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Research Products
(6 results)