2005 Fiscal Year Annual Research Report
小児固形腫瘍の根治を目指した腫瘍幹細胞標的療法の開発研究
Project/Area Number |
17659553
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小室 広昭 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (80296128)
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Keywords | 腫瘍幹細胞 / 小児がん / 神経芽腫 / FACS / side population細胞 / ABCトランスポーター |
Research Abstract |
以前から腫瘍は組織の幹細胞から発生するという概念が存在し、最近、腫瘍幹細胞の存在が注目されている。化学療法や放射線療法を中心としたこれまでの治療は腫瘍中のすべての細胞を平等に標的とした治療であり、腫瘍を作り出す責任細胞である腫瘍幹細胞が治療に抵抗性を示し生き残ってしまうと、治療後にその残った腫瘍幹細胞が再び増殖を開始し、再燃が生じるものと理解される。従って、難治性腫瘍の根治を可能にするためには、この腫瘍幹細胞を同定し、それを標的とした新しい治療法の開発が重要と考えられる。Hoechst33342というDNAに結合する蛍光色素を用いたFACS(fluorescence activated cell sorter)によるside population(SP)細胞分離法は多能性を持つ幹細胞を分離同定する非常に有用な手段である。本年度は、神経芽腫におけるSP細胞の分離同定を目的として、FACSによる解析を行った。【方法】神経芽腫の3つの細胞株(GOTO,SK-N-AS,SK-N-DZ)を用いて、SP細胞の有無を検討した。細胞浮遊液にHoechst33342を加えベクトンデッキンソン社のFACS Vantage SEを用いて解析を行った。さらに、ABCトランスポーター阻害薬のVerapamilを加えて解析を行った。【結果】細胞株3つのすべてにおいて少量ながらSP細胞の存在が確認された。また、Verapamilの添加により、これらのSP細胞分画は著減することが示された。【結語】神経芽腫におけるSP細胞は腫瘍を作り出す責任細胞である腫瘍幹細胞の可能性が高く、ABCトランスポーター様の抗がん剤を細胞外へ排出する機構を備えているものと思われた。今後、腫瘍の中にごくわずかに存在するこの幹細胞を標的にした新たな治療法の開発により難治性神経芽腫の根治が可能になるものと期待される。
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