2005 Fiscal Year Annual Research Report
損傷臓器の治癒再生を促進する分泌性タンパク質の解析
Project/Area Number |
17659565
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
原 孝彦 (財)東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 副参事研究員 (80280949)
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Keywords | FRP2 / 損傷治癒 / 筋再生 / 幹細胞 / アポトーシス |
Research Abstract |
筋ジストロフィーモデルマウスMdxでは、壊れた骨格筋繊維がただちに再生するため、筋ジストロフィー患者でおこる加齢依存的な運動能の重篤な低下には至らない。我々は、Mdxマウスでは損傷臓器の治癒再生を促進する分子機構が働いているとの仮説を立て、Mdxマウス骨格筋でが発現高進している分泌性タンパク質として、Frizzled related protein 2(FRP2)、およびマクロファージ走化性因子BRAKを同定した。まずFRP2は初代筋芽細胞のアポトーシスを抑制したため、FRP2を骨格筋に強制発現させたトランスジェニック(Tg)マウスを2系統樹立した。しかしハブ毒の筋内注射による筋破壊からの回復度に大きな差は観察されなかった。FRP2は筋破壊により急速に発現誘導されるため、TgマウスでのFRP2量が既に飽和している可能性がある。次に、BRAK遺伝子を欠損するノックアウト(KO)マウスを新しく作出した。BRAK-KOマウスをMdxマウスと交配し、筋変性度の指標である血中クレアチンキナーゼ(CK)活性を定期的に測定していったところ、BRAK(-/-)Mdxマウス群の方がBRAK(+/-)Mdxマウス群よりCK値が有意に低下していた。この事実は、当初の予想に反してBRAKはMdxマウスの骨格筋変性を悪化させる因子である可能性を示唆する。Mdxマウスでは、筋膜のジストロフィン複合体に結合して存在する一酸化窒素(NO)合成酵素が消失するために、NO産生が局所的に低下してマクロファージの攻撃を受けやすいとの報告がある。本研究で作出した遺伝子改変動物を用いたより詳細な解析によって、損傷臓器の治癒再生におけるFRP2とBRAKの機能を明らかにしていく予定である。
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