2005 Fiscal Year Annual Research Report
ICUでの精神障害は海馬のneurogenesis障害が原因か?
Project/Area Number |
17659572
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Research Institution | Department of Clinical Research National Hospital Organization, National Sanyo Hospital |
Principal Investigator |
富士岡 隆 独立行政法人国立病院機構(山陽病院臨床研究部), 外科・医師 研究員 (50304473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 知之 独立行政法人国立病院機構(山陽病院臨床研究部), 形態研究室長 (20200272)
杉 和郎 独立行政法人国立病院機構(山陽病院臨床研究部), 副院長 (70241271)
前川 剛 山口大学, 医学部, 教授 (60034972)
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Keywords | 特殊環境 / ストレス / 脳・神経 / 海馬 / 情動・認知 |
Research Abstract |
ICU症候群と呼ばれていたこともある、せん妄、情動不安、認知障害などの精神症状は、ICU入室後の患者において少なからず発症する。しかしながら、脳内の病態についてはほとんど解明されていない。ICUでの精神障害を予防するためには、精神障害が発症するメカニズムを解明する必要がある。情動や認知の機能に深く関わっている海馬は、成人になってもneurogenesisを続ける、脳内でも特異的な部位である。海馬のneurogenesisは環境からの影響を受けやすく、海馬のneurogenesisが障害されると情動や認知の障害を引き起こす。本研究では、ICUの環境因子による海馬のneurogenesisの変化が、情動や認知の障害を起こすことに関与しているかどうかを明らかにする。そのために、ICU擬似環境モデルを用いて動物実験を行った。本年度は、照明環境の影響について検討した。1日中照明をしている環境においたマウス(L/L群)と、12時間毎の明暗リズム環境においたマウス(L/D群)を比較した。2群の間に、体重変化の明らかな違いは認められなかった。海馬歯状回のBrdU陽性細胞は、L/L群では、L/D群と比べ有意にその数が減少した。オープンフィールドテストでは、L/D群は時間経過とともに環境への適応行動がみられたが、L/L群は環境への適応不全行動がみられた。その後、これらの動物を、12時間毎の明暗リズム環境においたところ、2群の行動の違いは減少した。水迷路学習テストでは、L/L群は、L/D群と比較して有意に記憶の形成が遅かった。記憶の形成後の成績には、2群の間に有意な差は認められなかった。以上のことより、明暗の日内リズムをなくすと、海馬のneurogenesisが抑制され、情動や認知の行動異常を引き起こすことがわかった。
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Research Products
(2 results)