2006 Fiscal Year Annual Research Report
咀嚼が海馬神経幹細胞の増殖・分化・維持に与える影響について
Project/Area Number |
17659645
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小口 春久 北海道大学, 名誉教授 (30124689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三留 雅人 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (50261318)
白川 哲夫 日本大学, 歯学部, 教授 (00187527)
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Keywords | 歯学 / 発生・分化 / 神経科学 / 脳・神経 / 咀嚼 |
Research Abstract |
咀嚼がマウスの中枢神経に与える影響を、海馬歯状回の神経幹細胞の分化動態を指標に調べた。4週齢マウスをA)通常の固形飼料を与える群(コントロール群)、B)軟食摂取のモデルとして粉末飼料を与える群、およびC)歯牙欠損モデルとして、麻酔下で両側の上下の臼歯をすべて除去し、粉末飼料を与える群、の3群に分け、各群において、咀嚼に対する海馬歯状回神経幹細胞の影響を調べた。3つの群はそれぞれの条件で10週間飼育した後、分裂した神経幹細胞のマーカーであるBrdU(bromodeoxyuridine、50μg/gb.w.)を1日1回、12日間投与した。投与終了1日後、各グループの半数を4%パラホルムアルデヒデドにて灌流固定を行い、固定後脳を取り出し、ビブラトームにて50μmの切片を作成し、海馬全体の連続切片を作成した。残りの半数はBudU陽性細胞の一定期間後の生存・分化を調べる目的で、さらに各条件で5週間飼育した後、灌流固定を行い同様の脳切片を作成した。得られた切片から3群間で神程幹細胞の増殖、分化、維持および機能発現などに違いがあるか調べた。本年度は、神経幹細胞のマーカーであるネスチン、およびアストロサイトのマーカーであるS100bの抗体を用い海馬歯状回の幹細胞数をカウントし、BrdU陽性細胞との一致を比較した。その結果、5週間飼育を続けた場合、固形飼料を与えた群に比べて、粉末飼料や抜歯後粉末飼料を与えた群で、BrdU陽性を示した細胞は、有意にネスチンと局在を一致する細胞が減少し、また、S100bに陽性を示す細胞との局在が増加した。しかし、アポトーシスのマーカーであるCaspase-3で染色した結果、BrdU陽性を示す細胞との局在の一致が見られたが、その数は全群で少なく、有意差は認められなかった。以上より、咀嚼は海馬で分化する神経幹細胞の維持に影響を与えることが示唆された。
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