Research Abstract |
本研究では,虐待に影響すると指摘されている多胎児をもつ母親の不安状態を単胎児の母親との比較から分析し,それらに関連する要因について検討した。 調査期間は,2005年2月から2006年4月で,郵送による自記式質問紙により回答を得た。対象者は,A市の妊娠届出書兼妊娠連絡票で把握した6歳以下の双子の母親170人,ならびに三つ子の母親5人,計175人の多胎児の母親である。なお,比較対照群として,双子ならびに三つ子の年齢構成をマッチさせたA市に在住する単胎児の母親1469人から協力を得た。母親の不安の程度は日本版STAIの状態不安および特性不安を用いて測定した。分析に使用したデータは,主観的不安の程度として,妊娠中の不安,今後の育児に対する不安を用い,育児背景要因として,妊娠中の育児に対するイメージ,母親の体調,就労状況,睡眠状態,ストレス解消法の有無,育児サークルの参加状況,育児協力者の有無,子どもの数,児の障害または病気の有無等のデータを用いた。 状態不安では,「高不安」の母親の比率が,多胎児の母親の方が単胎児の母親より有意に高かった。一方,特性不安では,単胎児の母親と多胎児の母親では有意な差異は認められなかった。また,多胎児の母親は単胎児の母親に比べ,妊娠中ならびに今後の育児に不安を抱いている者の比率が有意に高く,かつ妊娠中育児についてイメージできなかった者,ストレス解消法がない者の比率が有意に高かった。ロジスティック回帰分析の結果,状態不安の「高不安」には,妊娠中育児に対するイメージができなかったこと,今後の育児に対して不安があること,母親の体調不良ならびに睡眠不足を強く感じていること,ストレス解消法がないことが関連していた。
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