2006 Fiscal Year Annual Research Report
ネットワーク構造に着目した生体の機能発現機構解明と工学的再現
Project/Area Number |
17680016
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
倉林 大輔 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 助教授 (00334508)
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Keywords | ネットワーク / グラフ理論 / スモールワールド |
Research Abstract |
本年度は、独立した移動体が多数存在する環境において、(1)局所的な遭遇および交渉過程によって形成されるネットワーク、および(2)移動体間の非明示的な状態量交換による編隊構造遷移、についてモデル化を行い、これらが特定の機能構造を持ちうるための条件について明らかにした。 前者については、特定の機能構造としてスモールワールド型ネットワークを表すグラフ評価パラメタを念頭に置き、(1)一定の評価値を持ち、機能構造を持つための定性的な性質、(2)ネットワーク時間発展の確率モデルによる定式化、(3)モデル化ネットワークにおける、パラメタ空間に対する機能構造発現可否分岐の解析、を行った。旧来の研究では、数学的に理想化された環境で、移動体の不連続なジャンプを仮定してモデル化が進められていたが、本研究では確率モデルとグラフ理論上の知見から解析を初め、連続的に動作を続ける独立移動体間の局所的な相互作用によって形成されるネットワークを、部分空間への分割問題に変換し、機能構造発現のモデル化に成功した。成果として、特定の機能構造を発現するための係数間連関の定式化に成功し、旧来の研究における不連続なジャンプを代替する行動を明らかにした。 後者では、外部入力を周囲形状を周期的に計測する、一種の周期信号とし、各個体に非線形振動子を割り当てる集団モデルを提案した。外部からの強制入力項と振動子間の同期関係を解析することにより、振動子間の位相差によって群れ形状の遷移を可能とした。これは、移動体集団の置かれた環境に関する情報を位相に圧縮して相互作用を及ぼしあうことに相当し、本研究成果の工学的応用手法として期待できる。小型の自律型移動ロボットを用いた実験によって、本手法の妥当性と有効性を示した。
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