2005 Fiscal Year Annual Research Report
社会性による意志決定と感情の調節メカニズムに関する研究
Project/Area Number |
17680023
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Research Institution | Advanced Telecommunications Research Institute International |
Principal Investigator |
NORBERTO・E NAWA 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, ネットワーク情報学研究所, 研究員 (40395116)
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Keywords | 意志決定 / 感情 / 社会心理 / 後悔 / 意思決定 |
Research Abstract |
人間は日常生活の様々な場面において他者とやり取りを行い、決断を強いられる。その意思決定の際、人間は他者から影響を受けたり、別の多くの他者に影響を与えたりする。社会・経済システムの動きは、個々人各々の意思から帰結した行動によって構成される。そのような複雑な社会・経済システムを理解するには、ますます人間の行動や意思決定メカニズムを理解する必要がある。本研究では、「他者の存在」が人間の意思決定過程とそこから創出される感情にどのような影響を与えるのかを検討した。従来の経済学理論では、人間は常に合理的に行動を選択するとしているため、人間の最も特徴的な要素と言える「こころ」の影響を除外してきた。しかし、多くの場合に意思決定過程に重大な影響を与えると思われる感情の一つは「後悔」である。後悔は、決断が実際に導いた状況より価値の高い二者択一の状況と比較することによって生じる感情である。本研究では、意思決定者が見落とした選択肢が他者の存在によって顕著な評価基準になる状況に焦点をあてた。「他者との比較により意思決定者が感じる感情の強度,特に後悔,はどのように変動するか」を実験的に検証した。自己回答による実験結果は、自分が得た報酬を評価するときに「他者」が得た報酬は一つの重要な基準となることを示した。(ア)選択しなかったルーレットの値が意思決定者が得た正の報酬より大きい報酬をもたらした場合の「後悔」の強度は他者が存在するときの方が大きい。(イ)選ばなかったルーレットがもたらした報酬が意思決定者が得た正・負の報酬より大きい場合の「嫉妬」と「羨望」の強度は他者が存在するときの方が大きい。(ウ)「満足度」の強度は他者の存在によって有意差はなかった。今後の課題は他者の存在による感情変化の神経科学的基盤の特定と感情変化が意思決定に与える影響を明確にすることである。
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