2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17681003
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
鶴島 修夫 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 研究員 (40357538)
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Keywords | メタン / 海洋 / 温室効果気体 / 全炭酸 / 温暖化 |
Research Abstract |
深層水利用培養実験を行い、炭酸物質と共に生物起源の温暖化物質であるメタンの動態について新しい知見が得られた。淡青丸相模湾研究航海(KTO5-22)において2005年9月12日に相模湾の深層水汲み上げ装置「拓海」(北緯38.1度、東経139.4度)近傍にて5mおよび200m深の海水をニスキン採水器で採取した。研究室にて、照明付きインキュベーターを用いて培養実験を行った。5mの表層水と200mの深層水は1:1の割合で混合し、無濾過の他、10,100,200μmのフィルターを通したものを5Lの高ガスバリヤタイプのロンテナー型透明容器にそれぞれ分取し、インキュベーター内にセットした。状況に応じ、1-2日毎にサンプルを分取し、栄養塩、クロロフィルa、全炭酸、メタンを測定した。また、随時顕微鏡観察を行い、培養状況を確認した。いずれの培養試料も4-5日間は大きな変化が起こらなかったが、5日目以降に珪藻を主体とする植物プランクトンの活発な増殖がみられた。濾過試料については培養当初から大型の動物プランクトンは確認されず、培養末期に植物プランクトンの死骸とみられる凝集体粒子が形成された。無濾過試料については、培養当初より目視でも確認できる大型の動物プランクトンが存在しており、培養末期には10数個体程度の大型動物プランクトンと大量の糞粒が確認された。全炭酸とメタン濃度の時系列変化をみると、5日目以降に植物プランクトンの増殖に伴い全炭酸濃度が急激に減少した。これに伴い、いずれの試料においても2nM程度のメタン濃度の上昇が起こった。これまで、動物プランクトン体内や糞粒中の微細な還元環境はメタンの有力な発生源と考えられてきた。今回の実験では、少なくとも大型の動物プランクトンとその糞粒が存在しなくても、海水中でメタンの生成が起こりうることがわかった。
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