2005 Fiscal Year Annual Research Report
クロロベンゼン環およびブロモベンゼン環が誘起する強力な受容体結合力の解明
Project/Area Number |
17681005
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野瀬 健 九州大学, 大学院理学研究院, 助教授 (10301334)
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Keywords | 内分泌撹乱物質 / 核内受容体 / 構造活性相関 / 分子間相互作用 / 計算科学 / π相互作用 |
Research Abstract |
ベンゼン環にハロゲンが結合した化学物質、特にPCBやDDTは、生体内の受容体と強力に結合し強力な活性を発現することが知られている。その強力な受容体結合力の分子機構を解明するため、研究計画に従い以下の実験・研究を行った。 1)ab initio分子軌道計算によるハロゲン含有ベンゼン環の電荷分布の評価 PCB類縁化合物に対しab initio計算による構造最適化およびMP2法による電荷分布計算を実施した。これらの結果を、核内受容体とのドッキングシュミレーションに用いた。 2)HPLCによるハロゲン置換ベンゼン環の分子間相互作用の解析 炭化水素C18カラムおよびペンタフルオロフェニルカラム(F5Phe)を用いて、ハロゲン化フェノール類の溶出実験を実施した。カラムからの溶出時間はハロゲンの数にほぼ比例して遅延し、ハロゲンが付加した芳香環は疎水性相互作用、特にCH/πおよびπ/π相互作用が増強されていると考えられた。フェノールの溶出時間は、F5PheカラムではODSカラムに比べ遅延されるが、ハロゲン化フェノールはむしろ早く溶出されたことより、ハロゲン化芳香環の分子間相互作用におけるCH/π相互作用の重要性が示された。 3)核内受容体の立体構造解析 核内受容体の立体構造(PDBデータ)を分子モデリングシステムで解析した。特にエストロゲン受容体では、天然リガンドエストラジオール結合時に受容体Leu387とPhe404の側鎖がCH/π、edge-to-face型π/π相互作用を形成しており、これらをアミノ酸置換の導入箇所と決定した。受容体-リガンド複合体のエネルギーは計算プログラムABINIT-MPで算出した。HF法で算出した結合エネルギー値よりもMP2法による値が大きかった。これはMP2法は電子相関を考慮した弱い水素結合を見積もれることから、芳香環を介したCH/π、π/π相互作用がリガンド結合に重要であると判断された。
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