2006 Fiscal Year Annual Research Report
多細胞生物様の細胞分化により誘導される野生型枯草菌のバイオフィルム形成機構の解析
Project/Area Number |
17681023
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
小林 和夫 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助手 (70324978)
|
Keywords | バイオフィル / 枯草菌 / 形態形成 / 鞭毛形 |
Research Abstract |
1.ペリクル形成過程における細胞形態の変化。ペリクル形成過程における細胞の形態変化を経時的に調べた結果、運動能を持った浮遊細胞が、(1)細胞分裂後の細胞分離抑制による細胞チェーンの形成、(2)細胞チェーンが集合した凝集体の形成、(3)凝集体中での細胞分離、という順序で細胞の形態が変化することが分かった。また、ペリクル形成欠損となる18の転写因子変異株のうち15の変異株では、これらの過程のいずれかをブロックすることが分かった。 2.細胞の形態変化のメカニズム。細胞チェーンの形成は、鞭毛形成を司るシグマ因子SigDの抑制によって起こること、細胞凝集体の形成にはエキソポリサッカライド合成が必須であること、凝集体中での細胞の分離は、細胞壁溶解酵素CwlSに依存することを明らかにした。また、CwlSの誘導は、凝集体中で起こること、それは、凝集体形成に依存してシグマ因子SigHが誘導されるためであることが分かった。 3.鞭毛形成とバイオフィルム形成。鞭毛形成欠損株では、ペリクル形成の遅延が見られる。そこで、鞭毛形成遺伝子の一つmotA変異株について解析した結果、motA変異株では、エキソポリサッカライド合成遺伝子の発現が低下し、逆に鞭毛形成遺伝子の発現が増大することが分かった。さらに、この変化に原因となる転写因子としてSlrを同定し、Slrの活性が鞭毛形成遺伝子の変異により変化することを明らかにした。Slrは、鞭毛形成とバイオフィルム形成の両方を制御する因子であり、細胞が運動能をもったプランクトニック細胞として生育するのか、それともバイオフィルムを形成して基質に定着した状態で生育するのか、を決定する重要な因子であると考えられた。
|