2005 Fiscal Year Annual Research Report
遺跡出土下駄に関する製作技法および使用樹種に関する基礎的研究
Project/Area Number |
17682003
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
本村 充保 奈良県立橿原考古学研究所, 調査第1課, 主任研究員 (00270778)
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Keywords | 下駄の製作技法 / 炉粕町遺跡 / 使用樹種 / 博多遺跡 |
Research Abstract |
本年度は、九州地区を対象として、製作技法の観察に重点をおいた資料観察および樹種同定用のサンプル採取作業に対する許可申請を行い、許可が得られた資料について、サンプル採取作業を行った。 まず、資料観察においては、長崎県炉粕町遺跡出土資料で注目される成果を得ることができた。炉粕町遺跡で出土した下駄のうち、露卯下駄の製作技法として、明確に2系統の技法が存在することを明らかとなった。具体的には、露卯下駄のホゾが1つのものと、3つのものがある。このうち前者は台板の横断面形が逆台形となるのに対し、後者は逆三角形となる。さらに、前者の壺穴の穿孔法は錐状工具により表から一気に貫通させるのに対し、後者は表からはキリ状工具で、裏からはノミで穿孔する。このような差は、下駄の製作集団の違いである可能性が高いと考えられる。このように、技法上の特徴から明確に製作集団が2系統存在したと推定できる資料は、全国的に見ても他に類例はなく、重要な資料であるといえる。 樹種同定作業においては、福岡県福岡市博多遺跡群出土下駄を中心として、佐賀県唐津市・大分県・鹿児島県の協力を得ることができ、計約150点のサンプルを得ることができた。今回採取したサンプルは、地域的にはほぼ九州全域におよび、時期的は中世から近世のものを対象としたが、大まかな傾向として針葉樹系の樹種が多用されることが明らかとなり、特に博多遺跡ではその傾向が顕著であることが明らかとなった。このことから、少なくとも中世の博多遺跡においては、地域の植生に左右されることなく、原材とする樹種を選択していたと考えられる。
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