2007 Fiscal Year Annual Research Report
遺跡出土下駄に関する製作技法および使用樹種に関する基礎的研究
Project/Area Number |
17682003
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
本村 充保 Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture, 埋蔵文化財部, 主任研究員 (00270778)
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Keywords | 下駄の製作技法 / 壷穴の穿孔法 / 使用樹種 / 明石城武家屋敷跡 / 堺環濠都市遺跡 |
Research Abstract |
本年度は,近畿地区を対象として,製作技法の観察に重点をおいた資料観察および樹種同定用のサンプル採取作業に対する許可申請を行い,許可が得られた資料について,サンプル採取作業を行った。 まず,資料観察においては,前年度同様,壼穴の穿孔方法に着目した。その結果,兵庫県明石城武家屋敷跡・大阪府堺環濠都市遺跡では,壺穴をキリ状工具で穿孔するもの(Aタイプ)と表からはキリ状工具で,裏からはノミで穿孔するもの(Bタイプ)が混在することが明らかとなった。これは,中国地方の下駄と共通する特徴であり,基本的にAタイプのみである四国地方とは異なっており,瀬戸内海を挟んだ両地域で特徴が異なるという状況がより鮮明になったと考えられる。 樹種同定作業においては,明石城武家屋敷跡、堺環濠都市遺跡の出土下駄を中心として,兵庫県教育委員会・明石市教育委員会・堺市埋蔵文化財センターの協力を得ることができ,計約247点のサンプルを得ることができた。分析結果については,まだ十分に検討したわけではないが,明石城武家屋敷跡、堺環濠都市遺跡ではヒノキが比較的多用されるという傾向がみられる。これは,ほぼ同時期の徳島城下町遺跡でスギ・クリが比較的多用されるという状況とは異なっており,地域により使用樹種に差がみられることが明らかとなった。また,古代の下駄がまとまって出土した兵庫県袴狭遺跡では,ヒノキが多用されるという傾向がみられるものの,数種類の樹種が用いられており,樹種の集約化は認められないことが明らかとなった。
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