2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17684001
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤野 修 名古屋大学, 大学院多元数理科学研究科, 助教授 (60324711)
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Keywords | 極小モデル / ホッジ理論 / 調和形式 / トーリック多様体 / 消滅定理 |
Research Abstract |
平成18年度は昨年度に続き、極小モデル理論大発展の年であった。HaconとMckernanを中心とする4名の数学者によって、一般型代数多様体の極小モデルの存在が示された。正確には、もう少し一般的な対象に対して極小モデル理論がほぼ完璧な形で完全解決されたと言ってよいであろう。この結果の応用として、代数多様体に付随する標準環の有限生成性や、主偏極多様体のモジュライ空間の存在が簡単に従う。あまりにも大きな結果である。これによって極小モデル理論の今後の研究の方向は混沌としてきた。当事者の一人である私にも今後の方向性はよく分からない。以前研究していた特殊停止定理が今回の大論文の中で上手く使われていたのには複雑な気がする。私自身の研究に関して述べると、あまり中心的な問題には貢献できなかったような気がする。もちろん昨年度の続きでトーリック多様体の研究、解析的手法を使ったコホモロジーの単射性定理へのアプローチ、最近はホッジ理論を使ったコホモロジーの単射性定理の証明(これ自身は古くからある手法である)の更なる解析など、いろいろ研究している。私個人の18年度のもっとも特筆すべき結果は、トーリック多様体上の消滅定理である。証明に乗法写像を使うところがキーポイントである。証明がきわめて簡単であるだけでなく、結果は既存のものよりはるかに強い。すでに何度か講演しているが、思ったより受けがよい。論文もあっさりと受理され出版もされた。ただ、現在は電子形態での出版である。紙媒体での出版にはもう少し時間がかかるようである。これ以外にも出版予定のものが幾つかあるのだが、業績欄には出版されてから書きたい。18年度は個人的な理由などであまり出張に行けなかった。この点は当初の予定とは異なるが、研究活動は概ね順調だったと総括したい。
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