2005 Fiscal Year Annual Research Report
電子陽電子対消滅線をプローブとした宇宙高エネルギー現象の探査
Project/Area Number |
17684006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
国分 紀秀 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (50334248)
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Keywords | ガンマ線 / 硬X線 / 科学衛星 / 電子陽電子対消滅線 / 撮像型検出器 / 銀河系中心 / 無機シンチレーター / コーデッドマスク |
Research Abstract |
超新星残骸や活動銀河核、ブラックホール近傍の降着円盤など、宇宙にはMeVからGeVをさらに超えるような高エネルギー現象が普遍的に存在する。そこで加速された粒子や、放出された高いエネルギーの光子は、電磁相互作用や強い相互作用を介して電子陽電子を対生成することが可能であり、その帰結として放出される陽電子と電子の対消滅線を高い感度で観測することが出来れば、こうした高エネルギー現象の加速のまさに現場における物理情報を得ることが可能になる。本研究では、このために2005年に打ち上げられた「すざく」衛星に搭載される硬X線検出器(HXD)を用いた天体観測と、HXDを超える、さらに高感度な対消滅線検出器の開発を目的としている。 今年度はまず、Astro-E2衛星の打ち上げ前試験、及び打ち上げ後の軌道上較正試験に全力を注いだ。衛星は平成17年7月10日にM-Vロケット6号機によって舞事に軌道に投入され、「すざく」と命名された。その後約1ヶ月をかけて初期運用を行い、HXDに所定の高圧を印加し、全ての機能が正常に動作することを確認した。さらに約半年をかけて性能実証のための天体観測を行い、10keVから600keVの硬X線エネルギー帯域において、かつてない高感度の性能を持つことを実証した。本研究の目的である電子陽電子対消滅線の検出が特に期待される、銀河系中心領域に対しても約1週間程度の時間をかけて観測を実施することが出来た。 また、HXDを凌ぐ高感度の検出器を開発するため、陽極間隔が3mmという優れた性能を持つ位置検出型光電子増倍管と、対消滅線に対するエネルギー分解能が約3%という、かつてない高い分解能を持った無機結晶シンチレーター(LaBr3)のアレイを組み合わせた、撮像型検出器を試作し、位置分解能3mm、かつ、エネルギー分解能5%という性能を達成することが出来た。さらに、高感度の天体観測のためには必須であるアクティブシールドの概念を発展させたアクティブコーデッドマスクを実際に製作し、撮像検出器と組み合わせて低バックグラウンド化を実証するため、宇宙環境を模擬した加速器実験を実施した。
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