2005 Fiscal Year Annual Research Report
光ナノプローブによる単一カーボンナノチューブの光物性の探索と量子光デバイス応用
Project/Area Number |
17684012
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 一成 京都大学, 化学研究所, 助教授 (40311435)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 励起子 / 均一幅 |
Research Abstract |
単層カーボンナノチューブは理想的な1次元構造をもち、電気伝導・構造・機械特性などとともに光学的性質(光物性)に興味が持たれている。しかしながら、ナノチューブは直径や螺旋度によって半物性が著しく異なり、マクロな光学測定だけからでは十分な情報を得ることができない。そのため、光物性の解明には高い技術が要求される一本のナノチューブでの分光測定が必要である。一方で、ナノチューブのような1次元電子系でわずかな構造的な乱れがあれば量子状態は局在し、0次元状態になることが期待される。そこで、単一カーボンナノチューブ分光をツールとして、一次元性ならびに構造的な乱れに起因する0次元状態を積極的に利用し、カーボンナノチューブの新しい光物性・機能性の発現や量子光デバイス応用を探ることを目的としている。 本年度は、単一ナノチューブ分光によって単層カーボンナノチューブの室温ならびに極低温での光物性を理解することに注力した。まず、単一ナノチューブ分光が可能なSi基板上に架橋した単層カーボンナノチューブ試料を作製した。これを用いて、広い温度範囲で単一の架橋単層カーボンナノチューブの発光スペクトル測定を行った。室温において測定された単一のナノチューブの発光線幅は均一幅に相当し、自由励起子発光が支配的であることがわかった。また、系統的に200本ものナノチューブで測定を行ったところ、均一幅が直径に依存して変化することがわかった。これは、均一幅を決める励起子-フォノン相互作用が直径に依存し変化していることを示している。さらに、100K以下ではほとんどの架橋ナノチューブにおいて、一次元系にもかかわらずブリンキングやスペクトル拡散が起こることがわかった。このスペクトル拡散は数10meVのスケールで起こり、なおかつ低温において顕著に現れることからナノチューブ表面への分子吸着等に起因していると考えられる。
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