2005 Fiscal Year Annual Research Report
電子ドープ型銅酸化物の中性子散乱による磁気相関と高温超伝導の普遍的関係の解明
Project/Area Number |
17684016
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤田 全基 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (20303894)
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Keywords | 単結晶育成 / 中性子散乱 / 構造解析 / 磁気相関 / 電子ドープ型高温超伝導 |
Research Abstract |
今年度は、電子ドープ型高温超伝導体Pr_<1-x>LaCe_xCuO_4(PLCCO)の大型で、良質な単結晶を育成し、評価できる状況を整備した。具体的には、赤外線加熱単結晶育成装置を購入し、反強磁性秩序を示すCe濃度0.08から、オーバードープ組成の0.20までの広い組成について、単結晶試料を再現性良く育成することに成功した。また、育成した試料のモザイクを、新規に購入したゴニオメータをインストールしたX線回折装置で確認したところ、中性子散乱で使用するのに、充分な質の結晶であることを確認した。 さらに、PLCCO系の不純物置換効果をミュオンスピン回転(mSR)、及び、中性子粉末回折実験によって、系統的に調べた。その結果、Ni置換量が最大で0.08の組成範囲で、反強磁性相(x<0.10)では反強磁性転移温度$が置換量を増やすことで低下していき、超伝導相では静的磁気相関には、Ni置換による影響はないことを発見した。さらに、わずかなNiを混入することで、もともとのPLCCOの結晶構造(T'構造と呼ぶ)とは異なる、La_2(Cu,Ni)O_4(結晶構造をT構造と呼ぶ)の第二相が誘起されることを確認した。従って、Ni置換した試料では、Ceを取り込まないT構造相の出現によって、T'構造相のCe濃度が増加すると考え、この二相共存モデルで、mSRの結果がよく説明できることを示した。Cuサイトの少量の元素置換によって、T構造の第二相が出現する現象はこれまでに報告例がなく、T'構造相の構造不安定性について、新たな観点からの研究が可能であることを示す結果となった。このことは同時に、電子ドープ型銅酸化物では、元素置換により局所的な構造変化が引き起こされ、その事が超伝導性などの物性変化に関与している可能性を示唆している。 これら今年度の研究成果をもとに、来年度からの中性子散乱実験を行うための準備も同時に進めた。
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