Research Abstract |
18年度は,電子ドープ型高温超伝導体Nd_<2-x>Ce_xCuO_4(NCCO),および,Pr_<1-x>LaCe_xCuO_4(PLCCO)の大型で良質な単結晶を,赤外線加熱単結晶育成装置を用いた浮遊対溶融法で系統的に多数育成し,これら試料に対して中性子散乱実験を行った.具体的には,NCCO系では最適ドープであるCe濃度0.15の組成で,Cuサイトを非磁性元素であるZnで2%置換した試料を作成し,磁気相関に対する不純物効果を中性子散乱実験で調べた.また,PLCCO系では反強磁性秩序を示すCe濃度0.08と,オーバードープ組成の0.15と0.18について,それぞれ3ccの単結晶を育成した.育成した単結晶を使って,磁気相関の組成依存性,並びに,高エネルギー磁気励起の特徴を調べた. その結果,特に希土類磁性イオンの影響が少ないPLCCO系では,以下のような,電子ドープ系の磁気相関の特徴を実験的に明らかにすることができた.第一に,超伝導相の広い組成範囲に渡って,格子整合な反強磁性磁気揺らぎが存在することがわかった.また,どの組成においても,エネルギー遷移の増加と伴に,格子整合ピークの幅が増加する様子を観測したが,幅の拡がり方は最適組成の試料で緩やかで,電子濃度の濃い超伝導組成ほど急激である.従って,整合相関という特徴は,電子のドーピングに対して強固に残るが,磁気相関そのものはキャリア濃度の増加と伴に弱まることを意味している.このことは,各組成での磁気相関の温度依存性や,高エネルギー領域まで測定した磁気励起スペクトルの結果とも矛盾しない.電子ドープ系のオーバードープ領域での超伝導の消失は,ドーピングと伴に反強磁性磁気相関が弱まることとの関係を示唆する結果である.
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