2005 Fiscal Year Annual Research Report
超高分解能角度分解光電子分光装置の建設と水和コバルト酸化物超伝導機構の研究
Project/Area Number |
17684017
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 宇史 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10361065)
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Keywords | 光電子分光 / 超伝導 / 遷移金属酸化物 |
Research Abstract |
水和コバルト酸化物超伝導体の超伝導発現機構を解明する目的で、高分解能角度分解光電子分光装置の建設・改良を行った。具体的には、測定時における最高分解能を向上するために、極端紫外線フィルター機構の設計・取り付けを行った。その結果、超高真空中での試料表面の寿命を10倍以上も向上させる事に成功し、これまで表面劣化によって超高分解能光電子分光測定が実現できなかったという問題点を本質的に克服した。また、試料の極低温冷却を目的として、従来型に比べて熱容量を大幅に減らし熱コンダクタンスを向上させたコバルト酸化物用の新しい試料基板を考案し、設計を完了した。装置の建設・改良と同時並行して、非水和コバルト酸化物Na_xCoO_2の高分解能角度分解光電子分光実験を行い、価電子帯及びフェルミ準位近傍の電子状態を決定する事に成功した。その結果、Naのドープ量(0.3<x<0.72)によらず、Γ点を中心としたa_<1g>軌道からなる六角形状をした大きなホール的フェルミ面を見出した。また、LDAバンド計算の予想に反して、K点近傍のe_g'軌道に帰属される微小なホール面はどの組成領域でも観測されず、e_g'バンドが結合エネルギー100meV程度までフェルミ準位に近づくもののフェルミ準位を切らないことを見出した。また、a_<1g>軌道のフェルミ面の面積はラッティンジャーの総和則によく従う事を明らかにした。さらに、コバルト酸化物の比較研究として、銅酸化物Bi系高温超伝導体の高分解能角度分解光電子分光を行った。その結果、超伝導状態において、ブリルアンゾーンの(π,0)点近傍におけるエネルギーバンド分散の折れ曲がり(kink)構造に、不純物添加によって顕著な変化があらわれることを見出した。本実験で観測された電子状態における磁気的同位体効果の振る舞いから、銅酸化物における超伝導機構は磁気励起と密接に関係していると結論した。
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Research Products
(19 results)