2006 Fiscal Year Annual Research Report
超高分解能角度分解光電子分光装置の建設と水和コバルト酸化物超伝導機構の研究
Project/Area Number |
17684017
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 宇史 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10361065)
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Keywords | 光電子分光 / 超伝導 / 遷移金属酸化物 |
Research Abstract |
水和コバルト酸化物超伝導体の超伝導発現機構を解明する目的で、高分解能光電子分光装置の建設・改良を行った。本装置および高輝度放射光施設を用いて、CoO_2面に普遍の電子状態を明らかにする目的で、Na以外のアルカリ金属を含む非水和コバルト酸化物M_xCoO_2(M:Na,K,Rb)の系統的な角度分解光電子分光測定を行った。その結果、アルカリ金属の種類によらず、ブリルアンゾーン中のΓ(A)点を中心としたa_<1g>軌道による大きな六角形状のホール的フェルミ面が観測されることを見出した。さらに、バンド計算で予測されるK(H)点近傍のフェルミ面もアルカリ金属の種類によらず欠如している事を見出した。また、フェルミ準位近傍においてa_<1g>バンドの精密測定を行った結果、結合エネルギー100meV近傍でエネルギーバンドが急激に折れ曲がり、バンド有効質量が大きく繰り込まれている事を見出した。また、e_g'バンドはどの物質においても結合エネルギー100meV程度にバンドの頂点を持ち、それ以上フェルミ準位に近づかない事がわかった。このエネルギーバンドの折れ曲がり構造(kink構造)の起源として、a_<1g>バンドとe_gバンドの混成効果や電子-格子結合の可能性を示唆した。以上の結果から、Na。CoO_2の角度分解光電子分光で観測された電子状態は、CoO_2面に普遍であることを見出した。さらに、コバルト酸化物の比較研究として、銅酸化物Y系高温超伝導体の高分解能角度分解光電子分光を行った。その結果、フェルミ準位近傍におけるエネルギーバンドが、5本のバンド(表面結合・反結合バンド、バルク結合・反結合バンド、一次元CuO鎖バンド)から構成されることを見出した。表面バンドは、バルクの転移温度以下においてもフェルミ準位を横切り、金属的な振る舞いを示すことがわかった。また、バルクバンドの超伝導ギャップの波数依存性を測定することに成功し、ギャップ形状がd_<x^2-y^2>波対称性で良く記述されると結論した。
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