2006 Fiscal Year Annual Research Report
酸素同位体置換と静電キャリア密度制御を組み合わせた新しい量子臨界現象の探索
Project/Area Number |
17684020
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
井上 公 独立行政法人産業技術総合研究所, 強相関電子技術研究センター, 主任研究員 (00356502)
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Keywords | 酸素同位体置換 / 静電キャリア濃度制御 / チタン酸ストロンチウム / 有機絶縁膜 / 2次元電子ガス / 量子抵抗 / 金属非金属転移 / フィラメント |
Research Abstract |
本研究はSrTiO3単結晶において「酸素同位体置換による強誘電転移の制御」と「静電キャリア濃度制御による超伝導転移の制御」を同時に遂行することで未知の現象を探る研究である。一方が欠けると目的を達成することが出来ない。前者の制御には「熱処理最高温度が1500℃以上」という非常に厳しい仕様を満たす「循環式酸素同位体置換炉」が必要なのだが、この装置の購入がおよそ1年半近くも大幅に遅れてしまい昨年の12月にようやく納品してもらうことができた。現在までに装置の初期設定を終え、1500℃で1週間以上という連続運転に成功している。しかしながら、同位体置換の研究の方はかなりスケジュールを変更せざるを得なくなった。したがって、平成18年度は「静電キャリア濃度制御による超伝導転移の制御」の方の研究に多くの時間を割いた。そのおかげで、当初は予想できなかった大きな進展をみることができた。まず、ゲート絶縁膜に有機絶縁体であるパリレンを用いて静電効果によってキャリアをドープする手法を開発した。さらに電極との接触抵抗の影響を除外するためにチャネル部分に電圧端子を挿入して測定する方法を開発した。これによって、ヘリウム温度(4K)の低温においても静電効果のみによって絶縁体のSrTiO3を金属に変化させることに成功し、これまでSiやGaAsのような素性の良い半導体でしかなされていなかった量子抵抗と金属絶縁体転移の関係について、遷移金属酸化物では世界で初めての情報を与えることに成功した。移動度、ホール係数、磁気抵抗についてもデータを得ることに成功し、現在解析中である。さらに我々はこの方法で極低温領域(0.1K)での振る舞いを探索することにも成功し、実に驚くべき現象を観測した。最終年度は早々にこの現象を確認し、論文を投稿した上で、さらに詳細なデータを集める。
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