2005 Fiscal Year Annual Research Report
大気における砂塵エアロゾル粒子と人為起源物質との反応
Project/Area Number |
17684026
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小島 知子 熊本大学, 理学部, 助教授 (80281137)
|
Keywords | 環境分析 / 大気エアロゾル / 硫酸塩粒子 / 大気圏化学 / 雲形成 / 電子顕微鏡 |
Research Abstract |
アラブ首長国連邦の油田上空で採取された大気エアロゾルの試料を、透過型および走査型電子顕微鏡で分析し、多くの砂塵粒子が硫酸塩あるいは塩素を含む物質でコーティングされているのを見いだした。このようなコーティングは、油田から発せられる二酸化硫黄が砂塵や海塩粒子と反応した結果生じたものと思われる。硫酸塩など親水性の物質で覆われた砂塵粒子が雲形成や降水に及ぼす影響を検討し、7月に開かれた日本エアロゾル学会の年会で発表した。 また、九州大学のナノテクノロジー総合支援を受け、環境制御型電子顕微鏡を用いた水蒸気凝縮の実験も行った。アラブ首長国連邦の試料中に見られるコーティングのある砂塵粒子と、人工的に分散させた(コーティングのない)鉱物粒子を比較すると、前者の方がより低い相対湿度で水滴を形成する、すなわち雲凝結核としてより効果的であることがわかった。コーティングのある砂塵粒子は、大きな雲凝結核として降水をもたらしやすいと考えられるが、海塩など親水性の高い粒子が共存している場合、そちらの方に水蒸気を取られ、効果を充分に発揮できない可能性も高い。この結果に関しては、12月にサンフランシスコで開かれたAmerican Geophysical Unionの年会で一部発表している。 代表的な砂塵エアロゾルである黄砂と、硫酸塩など人為起源エアロゾルの輸送に関連性があることは、これまでにも指摘されている。どのような形で混合が起こっているのかを明らかにするため、本年度購入した硫酸塩粒子濃度計を金峰山山頂付近に設置し、黄砂期間内の硫酸塩濃度のモニタリングを行っている。粒子の電子顕微鏡分析やパーティクルカウンターのデータと併せて検討する予定である。
|