2006 Fiscal Year Annual Research Report
衝突蒸気雲内の炭素化合物反応過程の実験的研究-地球初期大気組成の解明に向けて-
Project/Area Number |
17684028
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉田 精司 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教授 (80313203)
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Keywords | 高速衝突物理 / 高速化学反応 / 有機分析 / 衝突蒸気雲 / 地球初期大気 / 生命の起源 / 天体衝突 / 衝突閃光 |
Research Abstract |
研究計画第2年度の本年度は、大きく分けて2種類の実験を行った。 1.レーザー照射による模擬衝突蒸気雲の生成実験 この実験では、阻石中の炭素成分を模擬したグラファイトのペレットを標的としてNd : YAGレーザーの照射によって蒸発させた。また、実験チェンバーの雰囲気には、原始地球大気を模擬したC02-N2-H20の混合気体を用いた。生成したガスは昨年度導入したGCMSで分析を行った。実験の結果は、酸化力のかなり強いC02存在下であっても、その分圧が200-300mbar以下であれば、かなり量のHCNが生成されることが判明した。これは、有機分子のその場合成が困難だと従来考えられてきたC02-N2-H20大気中での有機物合成の可能性を強く示唆する結果である。 2.隕石の高速衝突破片と大気の相互作用直接観察技術の開発 上記レーザー照射実験によって、炭素質隕石が原始地球大気中で高速衝突した際に大量のHCNを生成した可能性が現実味を帯びてきた。この可能性を確実に調査するためには、実際に炭素質隕石を高速衝突させてHCNの生成量を測定する必要がある。しかし、激しい加速を伴う高速銃を用いてもろい炭素質隕石を超高速に加速することは、技術的に大きな困難を伴う。そこでこの実験では、モデル大気中に懸架した炭素質隕石の薄いプレートにパイレックスの高速弾丸を正確に撃ち込み、その衝撃で炭素質隕石の高速衝突破片群を生成させる試みをNASA Ames研究センターで行った。一連の実験の結果、隕石プレートの形状などを調節することによって、4-5km/sの高速破片群が生成し、空力加熱によって生じた鉄原子熱輝線を観測することに成功した。この実験技術は、炭素質隕石のような高速加速の困難な物質の高速空力加熱過程を詳細に調査することを可能都市、原始期待の進化に対する天体衝突の影響を研究する上で非常に有用である。
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