2005 Fiscal Year Annual Research Report
2色赤外非線形分光法による溶液中での分子集合体の水素結合ダイナミクス
Project/Area Number |
17685001
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
太田 薫 神戸大学, 自然科学研究科, 助手 (30397822)
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Keywords | 赤外パルス光 / 非線形分光法 / 水素結合ダイナミクス / 分子会合体 |
Research Abstract |
1、既存のものに加えて、2台目の光パラメトリック発振/増幅および差周波発生装置(OPA&DFG)を製作し、2台の独立した波長可変の赤外光源を構築した。2台目のOPA&DFGより得られた赤外パルス光を分光器に導入し、パルス光のスペクトルを測定した。その結果、非線形分光を行うのに十分なスペクトル幅とエネルギーを持つことを確認した。 2、現有の過渡吸収測定系の改良を進め、10^<-3>オーダーの過渡吸収変化を短時間で測定できるようにした。この測定系を用いて、無極性溶媒中の水素結合による分子会合体の振動エネルギー緩和過程を調べた。ここでは四塩化炭素中でのフェノール会合体のOH伸縮振動モードを対象としている。フェノールと会合体を形成する塩基としてはベンゾニトリルやテトラヒドロフランなどを用いた。フェノールーベンゾニトリル会合体では過渡吸収の時間変化から、振動エネルギー緩和時間は5psであることがわかった。また、過渡吸収スペクトルの時間変化にはプローブ波数依存性は見られなかった。このことから会合体の水素結合ダイナミクスはエネルギー緩和よりも非常に速いかあるいは遅くても過渡吸収信号の減衰には直接的に影響しないことが考えられる。現在、振動緩和のメカニズムの詳細を検討中である。 3、1900cm^<-1>以下の赤外領域では空気中の水蒸気の吸収による影響が無視できないため、測定系全体を箱で覆い、乾燥空気や窒素を導入する必要がある。既存の乾燥空気・窒素発生装置を用いて検討を行ったところ、窒素を用いた場合は1900cm^<-1>以下の赤外領域での過渡吸収を測定するのに十分なレベルまで水蒸気の吸収の影響をなくすことができた。現在、測定系全体を窒素や乾燥空気で置換するまでに数時間かかるため、発生量を増やすことを検討している。
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