2007 Fiscal Year Annual Research Report
2色赤外非線形分光法による溶液中での分子集合体の水素結合ダイナミクス
Project/Area Number |
17685001
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
太田 薫 Kobe University, 分子フォトサイエンス研究センター, 特命助教 (30397822)
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Keywords | 赤外パルス光 / 非線形分光法 / 水素結合ダイナミクス / 分子会合体 |
Research Abstract |
1.昨年度に構築した3-パルス赤外フォトンエコー法の測定系を用いて、様々な極性溶媒中でのSCN^-の反対称伸縮振動モードの遷移エネルギーの揺らぎの大きさや速さ(相関関数の減衰)を計測した。プロトン性と非プロトン性の極性溶媒中での結果と比較することにより、遷移エネルギーの揺らぎのメカニズムについて検討した。溶質分子には、チオシアン酸テトラブチルアンモニウムを用いた。プロトン性溶媒にはホルムアミドやN-メチルホルムアミドを、非プロトン性の極性溶媒にはN,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等を用いた。実験結果から、今回用いた3種類の非プロトン性溶媒では相関関数の減衰として、100fs以下の非常に速い減衰成分と3〜6psの遅い減衰成分が存在することがわかった。これらの非プロトン性溶媒中では、減衰の速い成分の割合が大きく、溶媒の慣性的な動きによる揺らぎがメインであると考えられる。一方、プロトン性溶媒中では、ピコ秒の遅い減衰成分の割合が大きく、溶質-溶媒間の水素結合の生成と解離に伴うエネルギー揺らぎの寄与が重要であることがわかった。また、これらのプロトン性、非プロトン性溶媒中での電子状態における溶媒和ダイナミクスの応答関数の時間依存性の結果と比較すると、定量的な一致はよくないが、相関関数の減衰の定性的な傾向は一致していた。我々の実験結果から、溶液中での水素結合ダイナミクスの動的な側面に関して、新たな一面を明らかにすることができた。 2.これまでに構築した高感度な赤外過渡吸収法の測定系を用いて、分子内、分子間水素結合を持つ様々な分子集合体の振動ダイナミクスの研究に適用し、数多くの興味深い知見を得ることができた。
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