2006 Fiscal Year Annual Research Report
高次複合型カテキンオリゴマーの合成と機能探索に関する研究
Project/Area Number |
17685007
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大森 建 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 助手 (50282819)
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Keywords | ポリフェノール / カテキン / カテキンオリゴマー / オルトゴナル法 / フラボノイド |
Research Abstract |
茶やワイン等に含まれるフラボノイドは、古くから健康薬として人々の生活に密接に関ってきたが、これらは従来、分離や精製の困難さから、いわゆる"ポリフェノール"としてある組成を持った混合物のまま扱われてきた。しかし、近年の分析技術の進歩により、個々の化合物の特徴的な化学的性質が次第に解明され始めたことから、構造の定まった化合物をいかにして純粋に得るかが次なる課題となっている。 このような背景の下、本研究では糖とフラボノイドの類似性に着目し、豊富に蓄積された糖鎖化学の知識をフラボノイドの合成化学に利用することを試みた。そして実際に糖鎖合成に用いられる"オルトゴナル合成"の概念を援用し、カテキンオリゴマーの効率合成法を開発した。すなわち、フラバン骨格の4位に異なる種類の脱離基を備えた2種のカテキン誘導体を順次選択的に活性化し、他方と反応させることによりユニットを伸張してゆくことに成功した。本手法において重要な点は、活性化を行う出発化合物の芳香環上に臭素を保護基として導入した点にある。これにより、課題であった自己反応の抑制が可能となり、目的の交差反応物を収率よく得ることが可能となった。そして最近、当手法をより高次のオリゴマー合成へと展開し、12量体の合成に成功した。なお、本合成の最終工程においては分子量4千を超える化合物同士を結合させている。このような大きさの分子同士を炭素-炭素結合によって連結し、反応位置、立体化学を精密に制御した例はこれまでにないことから、本結果は合成化学的にも意義深い。また、各種のスペクトル解析から、これらのオリゴマーは左巻きのらせん構造を形成していることが示唆されており、構造化学の観点からも興味深い。
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