2006 Fiscal Year Annual Research Report
ブロック共重合体が誘起するDNAの規則的断片化に基づくDNAの凝縮構造解析
Project/Area Number |
17685009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長田 健介 東京大学, 大学院工学系研究科, 特任講師 (10396947)
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Keywords | 高分子構造・物性 / 核酸 / DNA凝縮 / 酵素反応 / DNAの折りたたみ構造 |
Research Abstract |
DNAはポリカチオンと相互作用することによりコイン-グロビュール転移が誘起され、小さく凝縮するが、完全に制御された転写複製システムを機能させるためにはDNAは整然と折りたたまれている必要がある。一方でニ重鎖DNAはそのらせん構造ゆえ剛直な棒状高分子であり、持続長はおよそ50nmにも達する。生体はニ重らせん構造を保ちつついかにDNAを折りたたみ凝縮するのだおうか。DNAとして遺伝子工学の礎である環状、超らせん構造で特徴づけられるプラスミドDNAを選択し、特に生体反応の場であり、かつDNAの剛直性が発現するナノスケールでのDNAの折りたたみに焦点を当てた。プラスミドDNAの凝縮はそのトポロジカルな制約により直鎖状DNAの凝縮とは異なる複雑な経路をとることが予想され、それ故これまでの知見は凝縮形態観察の域を出ていない。プラスミドDNAの凝縮過程の理解は、トポロジーの制約の中でいかに剛直な鎖を折りたたむか、トポロジーがなぜ存在するかとう科学的・生物学的興味とともに、DNAを凝縮状態で送達し、目的細胞へ遺伝子を導入、発現させるという遺伝子送達技術の確立のためにも非常に重要な命題である。単一のプラスミドDNA凝縮を取り出すため、カチオン性セグメントと親水性セグメントからなるブロック共重合体poly(ethylene glycol)-b-poly(L-lysine), PEG-PLL(PEG : Mw12000,PLL : DP17)を用い、両者の自己会合により形成される高分子ミセルをDNA凝縮の観測系として用いた。これによりこれまで多分子間相互作用ゆえに扱うことが出来なかったDNA凝縮に対して、化学量論比を含めた広い電荷比にわたって詳細に観察可能とする系を確立した。ナノスケールでの剛直性と折りたたみに焦点を当てた凝縮過程の検討から、特定の凝縮度(化学量論比近傍)においてプラスミドDNAの長さ、種類とは関係なくDNAの規則的な位置にニ重らせんの解離が誘起されることを明らかにし、DNAの凝縮気候に普遍的な法則があることを見出した。一方においては凝縮度の高いプラスミドDNAのニ重らせん構造は非特異的な箇所において不安定化されていることを見出した。これら凝縮に伴う二重鎖の不安定性を基に、AFM観察から得られるそれぞれの凝縮度におけるプラスミドDNAの凝縮構造を、トポロジーを含めて体系的に検討している。
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