Research Abstract |
本年度は極性官能基を冠状配置したフラーレン誘導体の合成手法の開発を行った.この検討により,穏やかな反応条件下,高効率的,高選択的に極性官能基を4つ冠状配置したアミノフラーレン誘導体の合成手法を確立した.すなわち,これまで光化学反応条件など特殊な活性化が必要であったアミノ化反応を,中性,暗所化で行えることを見いだし,種々の極性官能基をもつ一連のアミノフラーレンを合成した.この反応では極性溶媒を補溶媒とすることで,反応が良好に進むことを見いだし,この知見をもとにリン酸エステル部を極性官能基としたホスホリルフラーレンの合成にも成功している.ホスホリル化反応では,極性官能基の冠状配置は困難であったが,イオン特異性および捕捉能の高いと期待される化合物であることから,これらの化合物についてもイオン,分子捕捉について今後検討を行う予定である.本年度後半では,冠状配置した極性官能基による他の分子・イオンの捕捉について予備的検討を行ったが,その捕捉を分光手段等で確認することはできなかった.この結果を受け,フラーレン類縁体としてさらに大きな共役電子系を有する高次フラーレン,カーボンナノチューブについて予備検討を開始した.また,吸収スペクトルなどの手法に加え,核磁気共鳴による同定を見据え,水素内包フラーレンに極性官能基を導入する検討を行った.この検討により,水素分子を内包フラーレンの化学修飾でに成功し,その核磁気共鳴スペクトルに外部環境が影響することを見いだした.
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