2006 Fiscal Year Annual Research Report
巨大分子吸着系における価電子帯ホール・振動結合:有機電荷輸送機構の解明
Project/Area Number |
17685019
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
解良 聡 千葉大学, 大学院自然科学研究科, 助手 (10334202)
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Keywords | 表面界面物性 / 有機半導体 / 電子分光 / 薄膜 / 分子配向 |
Research Abstract |
本研究では有機半導体薄膜特有の電子構造と界面膜構造の関連性について「分子振動」というキーワードを掲げて研究を行っている。価電子帯トップ領域の電子状態の高感度測定を行うための高分解能光電子分光測定装置の調整が進み、エネルギーギャップ中の1/5000程度の微小状態密度を検知することが可能となった。また新規に導入した高分解能低速電子線回折装置(スポットプロファイル分析型:SPALEED)の立ち上げが完了し、トランスファー幅1800Åを達成し、微細薄膜構造の温度依存性測定が可能であることが確認された。GeS(001)単結晶基板上の銅フタロシアニン薄膜の構造は300Kでは規則的に配列するのに対し、220K程度の低温では乱れることがわかった。低温において分子振動の変化から分子基板間相互作用が減少し、分子が基板表面を移動した結果を捉えたと考えている。最終年度にあたり、有機半導体吸着構造の詳細実験の実施と成果報告の準備を進める。 一方、有機半導体トランジスタなどの有機デバイスにおけるキャリアの輸送機構を議論する上で、薄膜の幾何構造と電子構造の関連性を知ることは不可欠であるが、弱い相互作用で集合している有機半導体の電子構造については、その複雑さおよびエネルギーの小ささから議論が困難であった。本研究でグラファイト基板上に鉛フタロシアニン分子を吸着させると、任意の二量体構造を形成することを見出し、高分解能光電子分光測定により単量体と二量体の電子構造の変化(エネルギー準位分裂)を直接捉えることに成功した。また49Kの低温において分子振動の抑制によって分子間距離が変化し、軌道間相互作用の増加(分裂幅の増大)を検知した。バルク集合体(結晶)においてエネルギーバンド分散が形成される過程の最も初期段階の電子構造を捉えたことで、孤立分子系からの一連の弱い相互作用系の電子論が議論可能となったと言える。アメリカ物理学会誌の速報で発表された。
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