2005 Fiscal Year Annual Research Report
超伝導素子による単一光子検出に基づいた高精度光計測技術の開発研究
Project/Area Number |
17686008
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
福田 大治 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 研究員 (90312991)
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Keywords | 高量子効率 / 光子数識別 / 高エネルギー分解能 / 極低温 / カロリメータ / シングルフォトン / 光パルス / 低暗計数 |
Research Abstract |
本年度は、「量子効率20%、光子識別能力1〜3個、転送レート1kbit/sの単一光子検出技術を確立する」を目標とした研究活動を行った。この目標を実現させるため、(1)単一光子検出に向けた超伝導転移端マイクロカロリメータを用いた受光素子の試作、(2)広帯域、低雑音の信号読み出し系の構築、の二つを柱とする研究開発を行った。まず、(1)については、代表的な金属の超伝導転移温度と光学特性を検討し、チタンの持つ光学的反射特性と超伝導転移特性が受光素子の温度センサとして最適であることを明らかにした。この知見を基に、単一光子の検出を行うための素子構造を詳細設計し、フォトリソグラフィー、電子ビーム蒸着等を駆使して素子を試作した。作成した超伝導薄膜は300mK付近で急峻な超伝導転移を示し、受光素子として良好な動作が期待できることを確認した。次に(2)として、試作素子の光子入射時の応答を取り出す信号読み出し系を構築した。本素子の光子入射時の応答は、超伝導薄膜を流れる電流の変化となって現れる。この電流変化を感度良く測定するため、超伝導量子干渉素子による電流アンプを作成した。このアレイ型アンプを冷凍機内に設置し、その電流電圧変換特性とノイズ特性の評価を行った結果、増幅度800V/A、等価ノイズ6pA/Hz1/2を示し、受光素子の理想的な電流アンプとして動作することを確認した。この結果を基に、受光素子に定電圧を印加し、電熱フィードバックによる素子温度の自己安定化を図る実験を行ったところ、負性電流電圧特性が得られ、超伝導領域の急峻な温度領域に受光素子が安定に自己バイアスしている結果が得られた。これは、Ti系の材料を用いた素子では、世界初の結果となる。さらに、光ファイバーと効率良く結合する手法についても検討を行い、高量子効率と光子数識別能を持つ受光素子実現への見通しを得ることが出来た。
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