2005 Fiscal Year Annual Research Report
超伝導検出器アレイを用いた超高感度テラヘルツイメージングシステムの開発
Project/Area Number |
17686010
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
有吉 誠一郎 独立行政法人理化学研究所, テラヘルツイメージング研究チーム, 基礎科学特別研究員 (20391849)
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Keywords | 電波天文学 / 超伝導デバイス / テラヘルツ光技術 |
Research Abstract |
電波と光波の境界領域に位置するテラヘルツ波帯は、産業分野における各種非破壊検査や癌診断、生体内構造解析、天文分野における銀河形成進化の観測的研究などを行う上で重要な周波数バンドとして期待される。しかしこのバンドで高感度かつ大規模イメージングを行うために必要な多素子検出技術は未開拓である。そこで、超伝導トンネル接合素子(STJ)を用いた超高感度・広帯域テラヘルツ光直接検出器とそのイメージングアレイ化に向けた研究開発を進めている。検出器1画素は、ニオブ超伝導体の平面アンテナと超伝導マイクロストリップラインをSTJ素子で橋渡しした膜構造をとる。 まず、イメージング応用に向けた開発の第1歩として、テラヘルツ連続波光源(後進波管)と理研で構築されたイメージング・システムを使用して、STJ検出器(1画素)を用いた初のテラヘルツイメージングに成功した。次に、イメージ品質の改善に向けてSTJ検出器や光源の調整、ノイズ除去等を行った結果、現在では既存の焦電検出器に比べて少なくとも3.5桁高いS/N比を実現した。さらに、検出器5画素を1次元に並べたアレイ(リニアアレイ)及びその多系統信号を同時に読み出す回路系を構築することでより短時間のイメージングを可能にした。 一方、現在は冷媒(液体ヘリウム)を用いた0.3K冷却系で検出器を動作させている。この方法によって、雑音等価電力にして10^<-16>W/√Hzという地上天文観測に応用可能な検出性能を引き出すことには成功している。しかし今後、高地(遠隔地)やスペースでの天文観測、産業応用分野を開拓する上で冷媒を用いた冷却オペレーションが深刻な問題となる。そこで、検出器の低ノイズ特性を最大限に生かすために、低振動性に優れたパルスチューブ冷凍機を新規導入することで遠隔操作可能な高感度検出システムの構築を進めており、検出器アレイとの組合せ試験を行う準備が整いつつある。
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