Research Abstract |
高密度化,高集積化された電子デバイス内に生ずる応力の定量化技術が切望され続けている.これは例えば,ストレス・マイグレーションやき裂など,応力による様々な弊害が報告されているためである.また近年では,半導体ウエハやフラット・パネル・ディスプレイ用のガラスのような,大きな素材全面の微少な応力場を緻密に短時間で定量化できることが望まれている.これは,大きな素材から同一部品を大量に切り出す工程の,歩留まりを向上させる上で重要な技術となるためである.これらの応力測定には,複屈折測定によるアプローチが有効であり,これまでに多くの手法が提示されてきた. ところが,これら全てのシステムは必ず,試料もしくは光学素子を物理的に回転させるか,あるいは光変調素子を利用して,偏光面を電気的に旋回させる必要がある.一般に前者は,微少な応力を厳密に測定できる反面,測定速度の高速化が困難である.これに対して後者は,高速測定が可能となる反面,変調素子の温度に依存する特性が,微少応力の厳密測定への隘路となる. そこで本研究では,機械的回転あるいは偏光面の電気的な旋回,いずれをも要さない新しい複屈折測定法を考案し,予備実験のシステムを試作した.そして,この予備実験システムを利用して,測定原理の妥当性を実験的に確かめた.具体的には,位相差79.1nmの試料の位相差と,進相軸方位の測定を114回,位相差10nmの試料の位相差と,進相軸方位の測定を108回行った.その結果,標準偏差2nmの確度で複屈折位相差γを測定することができた.ばらつきの主因は,光学系を構成する光学素子の公差によることを論理的に推論し,実験的に裏付けた.また,光学素子の公差ぶんを実験結果より減算し,ばらつきを軽減する方法を示し,ゆえにこれが本質的な問題とはならないことを示した.これらの結果より,本測定法が妥当であると判断した.
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